AKB48のビジネスモデル


先日、第4回の総選挙も終わり、ますます盛り上がりを見せたAKB48。「ブームもピーク」と呼ばれながら、2005年12月に結成されてから既に6年以上経過し、ブレイクした08年からみても4年が過ぎた今でも人気を集めています。
このAKB48の人気は好き嫌いとは別に、ビジネスとして見た場合、非常に興味をひくところで、これもいろんな識者がいろんな分析をしています。これを網羅的に分析した書籍が下記の本で、上記のビジネスモデル図は著者の村山涼一氏(マーケティング・プランナー)によるものです。

詳細は本を読んでいただくとして、この手の本にありがちな、既存のビジネス理論を牽強付会的に無理矢理こじつけたようなところがなく、ごく自然に整理されています(「無理矢理あてはめている」という人はあまり理論がわかっていないと思われ。一通り理論をかじった者から見れば、本当にうまく整理されている)。そしてセオリー通りの面とその裏を行く逆貼り的な側面もきちんと分析されています。また、秋葉原からスタートしてから全国展開へ、という点ではロジャースのイノベーション普及理論で説明したり、ファンとの関係性を和田充夫教授の「関係性マーケティング」(CRMとは違う)で説明されるような劇団四季宝塚歌劇団と同じシステムを使っている、と看破したあたり(このあたりは私も気づいてはいましたが)はさすが現役マーケッターと唸らされます。
マーケティング戦略 第4版 (有斐閣アルマ)

マーケティング戦略 第4版 (有斐閣アルマ)

本当のところは、フィクサー秋元康氏の頭の中にしかなく、計算ずくの面と無意識のうちにそうなってしまった面があろうかと思いますが、経営戦略・マーケティング的な分析としてはほぼ説明できているでしょう。
これまでのアイドル・グループとの違いやビジネスモデルの模倣可能性まで分析されているあたりも必読です。
さて、あとは現在AKB48に関する今後の課題とその解決策を秋元氏をはじめとする運営側がどう考えて行くかがポイントです。考えられるだけでも以下の点があります。

・「会いに行けるアイドル」のコアコンセプトと、全国展開による相互矛盾をどう解消するか
・総選挙等で上位に行けない、マスコミの露出が少ないメンバーの不満、所属プロダクションの縛りをどう解消するか
・上位の人気メンバーの世代交代をいかにうまく進めるか(いわゆるモー娘。における「後藤真希問題」。とりあえずエース前田敦子離脱はうまく行きましたが)
・SKE、NMB、HKTなどの他地域グループとの関係性、AKB48を中心としたシステムのコントロールと展開をどうするか(松井珠理奈のAKB兼任問題に代表される問題)
・握手券、投票権を得るために大量買い・CD廃棄・ファンからの搾取といったいわゆる「AKB商法」への批判への対処をどうするか


まだまだいろいろありそうですが、このうち一番最後のAKB商法の批判については、秋元氏あたりは多分スルーでしょうね。このあたり新自由主義的・資本主義的スタンスはこれまで芸能界の荒波をくぐり抜けた秋元氏としては本質的な問題とは思っていないでしょう。
いずれにせよ、ゼロから数年かけてここまでのビジネスモデルを作り上げた秋元氏は好き嫌いやその是非は別として、やはり凄いと言わざるを得ないでしょう。