経営計画Ⅰ〜経営者の役割とは〜

以下は某企業の受講者様のための講義録です。


昨日の野口誠司氏(ヒューマン・トレジャー・ネット・コンサルツ代表)の講義、いかがでしたか?経営とは何をすることなのか、経営者の役割とは何か、いろいろと考えられたのではないかと思います。以下は昨日の講義のトピックをより深く考えてもらうための補足資料的なお話です。


-時代の環境変化を読む
企業は「環境変化に適応する存在」であると考えると、やはりいかに環境変化をとらえるかが重要なトピックになるでしょう。経済・経営学者の大家ピーター・ドラッカーは、「歴史が教えない未来」が始まると指摘し、これまでと異なり、産業構造が歴史の連続性により変化する時代は既に去ったとしています。そうなってくると、かつて香山健一氏やアルビン・トフラー氏らがブームを作った「未来学」こそ、これから必要な学問領域かもしれませんね。
製造業にとって、最も大きな環境変化要因と言えば、アジア・BRIC's(ブラジル・ロシア・インド・中国)など新興国の動向と為替市場動向でしょう。前者については、「コスト削減の製造拠点」から「販路拡大」としての意味合いが強くなっていることは講義の中でもありましたが、実はアジア・BRIC'sという切り口は既に古く、新たな視点が必要だと主張する方がいます。

東欧チャンス (PATHFINDER (5))

東欧チャンス (PATHFINDER (5))

大前研一がその代表格で、今最も注目すべきは東欧諸国であるとしています。大前氏は世界を代表するコンサルタントで、私もその視点の鋭さに常に感服していますが、彼の書籍はいろいろな点で我々の蒙を啓いてくれます。ぜひ読んでみてください。近作では下記が非常に読みやすく、勉強意識が高まりました。
即戦力の磨き方 (PHPビジネス新書)

即戦力の磨き方 (PHPビジネス新書)

後者の為替動向を始め、景気動向をつかむには、やはり野口氏も講義でおっしゃったように日経新聞が最適かと思います。忙しいビジネスパーソンにとっては読むのが大変でしょうが、以下のポイントを参考にしてください。

  1. 景気に最も大きな影響を与える日経平均株価」(株式)・「円相場」(為替)・「長期金利」(債券)の3点は、1面右下に掲載されています。この数値を毎日手書きで記録してみてください。景気変動の波やトレンドがわかるようになります。この3つの指標は、世の中のお金がどこに流れるかを示している指標です。
  2. 日経新聞の月曜日版には「景気指標」面があり、過去3年間の様々な景気指標が掲載されています。製造業にとって注意すべき景気指標には、「機械受注」「製品在庫率指数」があります。特に製品在庫率指数は在庫の状況がわかるので、この数値が高いときは生産調整が行われ、下降トレンドに向かう可能性があります。
  3. また同じ面には米国の景気指標も掲載されています。米国の経済政策はある意味でシンプルで、雇用関連の指標動向が政策に大きく影響します。
  4. 原材料の価格動向では、同じ面に「内外商品相場」が掲載されていますので、ここも注意します。特に国内の「H型鋼」(鉄鋼材の代表)、海外の原油」「すず」などは注意しましょう。
  5. 各市場の動向については、「マーケット総合」面の「大機小機」というコラムに注目。これは市場関係者による匿名の内部告発です。市場動向の予測など、貴重な情報が入っています。またビジネスや業界動向については「企業総合」面の「回転いす」に注目。これは様々な業界のトップが業界の先行きを語るインタビュー記事です。


-現場力について
企業は「組織」として運営されていますが、組織は「協働」を目的とします。だからこそ現場というのは侮れないのです。講義でも、いかなる戦略も現場が動ける形でないと意味をもてないといわれていたように、現場をどう動かすかというのは実は経営における最大のトピックかもしれません。「動かす」ということについてはリーダーシップやコミュニケーションがカギになるので、10月からの講座で詳しく学習しますが、ここでは「現場」というものについて補足をしておきます。
現場力の重要性を示す事例としては、講義でも何度も上がったトヨタ自動車がやはり最適でしょう。トヨタ関連の書籍はそれこそ唸るほどありますが、「後工程はお客様」「なぜは5回繰り返す」などに代表されるトヨタイズムは、やはりカンバンシステムにあります。このシステムは生産工程のシステムと理解されていますが、実は人材育成・組織風土醸成のシステムと捉えるべきです。他企業がカンバンシステムを真似して導入しても失敗することが多いのは、このあたりの誤解に基づきます。

大野耐一の現場経営

大野耐一の現場経営

上記はカンバンシステムを作り上げた大野耐一の著書です。トヨタ関連の書籍が多いことは先に述べましたが、下手なライターが書いたものを読むよりは、やはりオリジナルを一冊読むべきだと思います。


-経営の全体像を考えるための参考書籍
講義の中で事例として挙げられていた、日産(ゴーン)、ヤマト運輸(小倉)、イトーヨーカドー(鈴木)、ワタミ(渡邉)の参考書籍をご紹介します。とりわけ小倉氏の書いた「経営学」は大ベストセラーでもあり、「第二の創業」という観点でも非常に考えさせられるものです。ぜひともご一読を!

カルロス・ゴーン経営を語る (日経ビジネス人文庫)

カルロス・ゴーン経営を語る (日経ビジネス人文庫)

カルロス・ゴーン氏の来歴と思想が一通り読めます。別書「ルネッサンス」も参考に。
小倉昌男 経営学

小倉昌男 経営学

大ベストセラー。ブックオフなどで安く手に入るかも。
商売の創造 (生活図書ピース)

商売の創造 (生活図書ピース)

姉妹書に「商売の原点」。なお講義で出た「逆ピラミッド」のオリジナルは、カール・アルブレヒトが示した「逆さまのピラミッド―アメリカ流サービス革命とは何か」を参考に。
新たなる「挑戦」―夢をカタチにする時 (ソフトバンクビジネス)

新たなる「挑戦」―夢をカタチにする時 (ソフトバンクビジネス)

個人的に最も注目している渡邉美樹氏。どの著作もおもしろいので機会があればぜひ。


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