ヤクザに仕事を学ぶ話と社会的弱者の職業選択の話

http://www.huffingtonpost.jp/storysjp/depression-yakuza_b_5483482.html?utm_hp_ref=tw
リンク先の記事、とても良い記事です。一方で、鬱から立ち直ったご本人の仕事がアフィリエイトだった…というのがどうかなと思うのですが、アフィリエイトでも情報ビジネスでも詐欺でもヤクザ稼業でもそりゃあ一生懸命努力しなきゃそれなりの収益が得られないのは事実。
また、現実的にはこの方にとってはアフィリエイトしかビジネスの選択肢がなかったのだろう、という事実もよくわかります。

随分前ですが、ネットワークビジネスマルチ商法)賛成派の論客とネット上で論戦をしたことがあり、その合理性や正当性を議論したことがありますが、彼らの言い分には首肯する部分はほとんどなかったものの、唯一考えさせられた論点として、「社会的弱者にとって、経済的に自立する一つの手段としてネットワークビジネスが合法である以上、あっても良いのではないか」というものがありました。

私自身はネットワークビジネスというものは「人間関係を換金する」ものであり、儲けようとすればビジネスモデル的にどうしてもグレーゾーンに踏み込まざるを得ない、非生産的・非倫理的なものだと思っていますが、社会的弱者がとりあえず社会復帰する手段としての仕事として、よりベターなものがあるのかというと、確かに現状難しいなとも思うのです。
ノーマライゼーション、自立という観点から、憲法上とは別の意味で職業選択の自由度が増す社会ができることを望んでいます。

3.11から2年

今日は3.11、東日本大震災からちょうど2年目になります。今なお行方不明の方、避難所から出られない方も多くおられ、ご心痛をお察しいたします。

ビジネスの世界では、この日以降、さまざまな転換期を迎えました。製造業では工場の被災から部品供給がストップしたため、サプライチェーンの「再」分散化と部品の汎用化が進んでいます。これは一方で稼働率の低下によるコストアップリスクと、部品汎用化の制約からくる製品の無個性化のリスク(あるのかな?)と裏腹で、難しい舵取りを迫られます。

コンビニと日本人 なぜこの国の「文化」となったのか

コンビニと日本人 なぜこの国の「文化」となったのか

一方、サービス業でも被災対策が進んでおり、この本ではコンビニエンス・ストアの取り組みが細かく紹介されています。
きっかけは阪神大震災での教訓からのようですが、被災当時、翌12日には多くの施策が実行されています。「ライフライン」としての位置づけを担おうとするコンビニ業界の取り組みは、一方でNPOなどとは異なる営利企業のソーシャルビジネス化の取り組みとしてみることも可能です。

あらゆる戦後レジームが揺らいでいる日本においては、国や行政がカバーしなければならない範囲が格段に広がり、かつカバーできなくなっています。各々が社会のあり方・関わり方を本気で考えないといけません。

自戒を込めて。

ハンバーグを最短時間で焼く方法


『フライパンでハンバーグを焼くのに、片面5分ずつで10分かかり、手元にあるフライパンでは1度に2枚のハンバーグしか焼けません。このフライパンで3枚のハンバーグを焼くとき、どうやったら最短時間で焼き上げることができるでしょうか?』
これはかつてのベストセラー「頭の体操」で有名な多湖輝氏による問題です。
ロジカル・シンキング(論理的思考)の研修で使うネタですが、ロジカル・シンキングのベースは、KKD(勘と経験と度胸)をベースとしたギャンブル思考とオペレーション思考から脱したゼロ・ベース思考と仮説思考です。それぞれの違いは下記の図をご参照下さい。

元ネタ本はこちら。今となってはロジシンの古典的名書です。

問題解決プロフェッショナル「思考と技術」

問題解決プロフェッショナル「思考と技術」

さて、冒頭のハンバーグの解答ですが、いかがでしたか? ちょっと論理的な人なら「15分」と答えるでしょう。でもゼロ・ベースで考えれば答えは実は「10分」。3枚の下の正解例(ほかにも考えられるでしょうが)のように焼けば10分で焼けます。

ローソク問題(The candle problem)


Facebookに出したこの問題、有名な「ロウソク問題」(The candle problem)と呼ばれるもので、1945年に、カール・ドゥンカーという心理学者が考案した「創造力」を考える際に良く使われる事例です。
正解は下の図の通り。

固定観念や机上の論理に囚われていると、実世界にある画鋲の箱を見逃してしまいます。ましてやこの設問がいやらしいことに、「ローソク、画鋲、マッチがあります」と書いているもんだからなおのこと。気をつけなはれや!
ちなみに画像の一部は下記サイトからお借りしました。
思考力研究所 http://www.suzuryou.com/tokusyu_kiji.html
またこのネタを初めてみたのは下記の本から。画像もここからお借りしてます。

京大式ロジカルシンキング

京大式ロジカルシンキング

サイトも本も面白いので、興味があればご参照下さい。

売上アップ策のメカニズム

今がわかるリアル新常識 クイズ トップ企業の頭脳に挑戦! (ナガオカ文庫)

今がわかるリアル新常識 クイズ トップ企業の頭脳に挑戦! (ナガオカ文庫)

上記の本はいろんな企業の面白いアイデアを集めた本ですが、その中でも面白い事例に次のようなものがありました。

2000年、香川県で誕生したうどんのチェーン店「はなまるうどん」。現在は吉野家グループの一角で、全国に300店舗以上を構えています。同店では、宣伝費をかけずに最大の宣伝効果を発揮する方法として、2006年から先着順で「あるキャンペーン」を行っています。「うどん●●券」なるものを発行して割引サービスをするというもので、この企画はネーミングのインパクトも相まって、固定客を増やすことに成功しています。では、そのアイデアとは何でしょう?

正解は一ヶ月限定の「うどん定期券」を、500円で販売するというもの。
定期券を提示した客は、うどんの各メニューが105円引きで購入できるというもので、たった5回で元が取れるお得感満載な企画。
この企画の秀逸な点は、単なる割引・値引ではなく、パブリシティ効果(口コミ含む)が期待できる点です。「物が売れない→割引・値引」は、マイナス分を補うほどの客数増が見込めず、結果的に収支が悪化しますそのためにチラシやCMをやればもっと悪化する)。その点、この企画は広告宣伝費も少ない上に、(延べ)客数増が見込めるのです。

さて、この手の企画を立てる際、ポイントは定期券をいくらにするか、ということとメリットをいくらにするか(結果的には同じことを検討することになりますが)ということです。
当然ながらここは顧客動向の分析がベースになるでしょうが、俗にいうRFM分析(R=Recency,直近来店日、F=Frequency, 来店頻度、M=Money, 購入金額)でいうところの「F」、来店頻度です。飲食の場合、「ストマックシェア」という考え方があります。人が食べられる量は限られていて、消費者はお腹が減ったとき、必ずしもレストラン同士を比較しません。よって外食、中食の垣根を越えた競争に勝つことが必要だという考え方です。つまり、限られたストマックシェアを奪わないと、客数増が達成できないことになります。はなまるうどんが5回で元が取れる価格設定にしたということは、それまでの同うどん店の来店頻度は常連でも月5回を少し下回るレベルなのでしょう(週1回以下)。
一方、割引額を105円にしたのは、売上分解式「売上=客数×客単価」で、平均客単価に注目をし、分析をした結果だと思われます。それにしても同店の「かけうどん小」は販売価格なら105円なので、定期券を買えば無料で1ヶ月食べ放題になる…。
いずれにせよ、この手の販促企画ネタは、センセーショナルでありながら実を残す(売上をアップさせる)というバランスが勝負なわけで、当然ながら思いつき「だけ」でやると火傷するか、まったく効果がないかとなります。
ちなみに元ネタとなる交通機関の定期券の割引率は、だいたい30〜40%程度、元祖のJRが一番高く、1ヶ月通勤定期でも約50%、6ヶ月定期なら約60%になります。
このはなまるうどんの定期券キャンペーン、結果の数値情報はわかりませんが、大好評だったようです。しかし2011年は発行されず、今年はポンパレというクーポン共同購入サイトでの発売のみとなり(ただし価格は500円から200円へ値下げ)、以前はどこでもOKだったのが今年は12店舗のみ利用可の限定となってしまったようです。このあたりは何か計算外の事象が2010年に起きたのか、より戦略的に定期券を使おうとしたのか、何か事情がありそうです。

AKB48のビジネスモデル


先日、第4回の総選挙も終わり、ますます盛り上がりを見せたAKB48。「ブームもピーク」と呼ばれながら、2005年12月に結成されてから既に6年以上経過し、ブレイクした08年からみても4年が過ぎた今でも人気を集めています。
このAKB48の人気は好き嫌いとは別に、ビジネスとして見た場合、非常に興味をひくところで、これもいろんな識者がいろんな分析をしています。これを網羅的に分析した書籍が下記の本で、上記のビジネスモデル図は著者の村山涼一氏(マーケティング・プランナー)によるものです。

詳細は本を読んでいただくとして、この手の本にありがちな、既存のビジネス理論を牽強付会的に無理矢理こじつけたようなところがなく、ごく自然に整理されています(「無理矢理あてはめている」という人はあまり理論がわかっていないと思われ。一通り理論をかじった者から見れば、本当にうまく整理されている)。そしてセオリー通りの面とその裏を行く逆貼り的な側面もきちんと分析されています。また、秋葉原からスタートしてから全国展開へ、という点ではロジャースのイノベーション普及理論で説明したり、ファンとの関係性を和田充夫教授の「関係性マーケティング」(CRMとは違う)で説明されるような劇団四季宝塚歌劇団と同じシステムを使っている、と看破したあたり(このあたりは私も気づいてはいましたが)はさすが現役マーケッターと唸らされます。
マーケティング戦略 第4版 (有斐閣アルマ)

マーケティング戦略 第4版 (有斐閣アルマ)

本当のところは、フィクサー秋元康氏の頭の中にしかなく、計算ずくの面と無意識のうちにそうなってしまった面があろうかと思いますが、経営戦略・マーケティング的な分析としてはほぼ説明できているでしょう。
これまでのアイドル・グループとの違いやビジネスモデルの模倣可能性まで分析されているあたりも必読です。
さて、あとは現在AKB48に関する今後の課題とその解決策を秋元氏をはじめとする運営側がどう考えて行くかがポイントです。考えられるだけでも以下の点があります。

・「会いに行けるアイドル」のコアコンセプトと、全国展開による相互矛盾をどう解消するか
・総選挙等で上位に行けない、マスコミの露出が少ないメンバーの不満、所属プロダクションの縛りをどう解消するか
・上位の人気メンバーの世代交代をいかにうまく進めるか(いわゆるモー娘。における「後藤真希問題」。とりあえずエース前田敦子離脱はうまく行きましたが)
・SKE、NMB、HKTなどの他地域グループとの関係性、AKB48を中心としたシステムのコントロールと展開をどうするか(松井珠理奈のAKB兼任問題に代表される問題)
・握手券、投票権を得るために大量買い・CD廃棄・ファンからの搾取といったいわゆる「AKB商法」への批判への対処をどうするか


まだまだいろいろありそうですが、このうち一番最後のAKB商法の批判については、秋元氏あたりは多分スルーでしょうね。このあたり新自由主義的・資本主義的スタンスはこれまで芸能界の荒波をくぐり抜けた秋元氏としては本質的な問題とは思っていないでしょう。
いずれにせよ、ゼロから数年かけてここまでのビジネスモデルを作り上げた秋元氏は好き嫌いやその是非は別として、やはり凄いと言わざるを得ないでしょう。

事業型NPOにまつわるアレコレ。1ヶ月ぶりの更新です(^^;

5/26に、福岡県からの委託で事業型NPO育成事業に取り組む一般社団法人SINKaが主催する「ビジネスプランプレゼンテーション」に出席してきました。私も昨年から少し同事業に関係して、セミナーやコンサルティングをさせてもらっていることもあり、現在新たに社会的事業に取り組もうとしているアントレプレナー(起業家)の方々のプレゼンを見学しました。
個別の発表内容についてはふれませんが、非常に面白いプランが並んでいました。その一方で講評者が指摘されたような課題を私も同様に感じました。これは、日本における事業型NPOの課題として共通のものであると思われます。
講評者の方々から指摘されたポイントは大きく分けて次の3点。


1.やろうとしている事業はNPOでなくてはならないのか?株式会社でもいいのではないか?
2.既存の類似事業や企業とどう差別化を図るのか?
3.継続性を保つための収支構造をどう設計するか?


1.やろうとしている事業はNPOでないといけないのか?
そもそも、NPOとは非営利活動法人と呼ばれますが、要は株式会社と異なり、株主への配当がないだけの話で(ある要件を満たして認定NPOとなれば税制優遇や寄付金控除を受けられますが)、別に儲けちゃいけないわけではないのです。儲けた分を事業に再投資し、より質の高い事業を展開せよ、という話で、これもまあよくよく考えれば株式会社とさほど変わらない。事業内容も極端にいえば何でもありで、NPOの事業領域として設定されている17種類のどれにでも少しでも関係があればいいわけです。だから何が「公益」・「善」かはメンバーが考えているだけで、正しいかどうかは実は誰にもわからないですし、それも構わないのです。たとえば「種としてのゴギブリを保存する」でも「演歌を消滅から救う」でも何でもいいのです。

(2009年12月31日現在:複数回答 出典:内閣府ホームページ)

「事業型NPO」とは、社会の課題を事業を行うことで解決しようとするNPOであり、NPOの資金調達のために収益事業を行ない、活動の運営資金に充当していた従来のNPOよりも、もっと積極的に「事業」をとらえています。近年事業型NPOが注目される背景には、グラミン銀行の設立で知られるムハマド・ユヌスの影響があるでしょう。

NPOが必要とされる背景には、一般に次の3つの切り口で説明されています。

1.「市場の失敗」…市場メカニズムが働きにくい分野(ex.海外援助活動)
2.「政府に対する比較優位性」…政府は市場の失敗をすべてカバーできない(ex.教育)
3.「多数派・権力者への異議、代替提案」…少数派の意見・利害の代弁(ex.アドボカシー)

1.は、要は「金にならない・なりにくい」「金の話にすると問題が多い」といった事業領域。2.は本来1.のようなものは政府なり自治体なりがやるべきなんですが、予算はないし、それよりも民間に任せた方が良いような事業領域。3.はマイノリティーの存在意義を知らしめる社会化とでもいうような事業領域。
つまり、この手の事業は税金や企業活動ではカバーしにくいニッチな事業領域といえるもので、そう考えると、「事業型NPO」という言葉自体はもともと矛盾を孕んでいるといえます。ゆえに「事業型」を目指せば目指すほど、実はNPOである必要性は薄れてきます。
NPOを事業体として選択する理由の第一は功利的ではありますが、社会性を謳うのに株式会社よりも適しているからだと思います。それならば「事業の評価(何がどうなったらミッションを果たしているといえるのか)」と「情報公開(実際、活動において成果が上がっているか)」をきちんと行うことがカギでしょう。


2.既存の類似事業や企業とどう差別化を図るのか?
NPOの事業でわりとポピュラーなのが、教育・介護・障がい者などのテーマです。これらは公教育や社会保障制度の中で既に確固たるものが存在します。もちろんそれだけでは足りない面が多々あるので、既存の民間事業者も多く参入しています。つまり、こういった事業領域を主とするNPOは、公的制度や民間の営利事業者と競争しなければなりません。
ここでも矛盾があるのは、競争しなければならないような事業領域には参入せず、それらからも漏れてしまうような領域が本来NPOが担うべきところになるのですが、結局、これも収益を得て持続させようとすれば「事業型」を目指すことになり、必然的に競争市場に入っていかないといけない、といった矛盾があるのです。
いずれにせよ、カギとなるのは「マーケティングでしょう。


3.継続性を保つための収支構造をどう設計するか?
というわけで、事業型NPOの肝は前述の1.2.を考えた上で、収支構造のモデルを確立し、持続性をどう保つかにあります。もちろん事業内容によっては、解決しようとしている社会問題が解消すれば、NPOとしては解散して良いわけですが、持続していかないといけない事業も当然あります。
いずれにせよ、この収支構造を設計する=ビジネスモデルを作ることができないければ、賛同者から金を集めることは出来ません。

この上図は、一般的な非営利組織の収益モデルを示したものです。
まず一つには国や自治体などからの助成・補助金があります。が、これはNPOのメリットである自由な活動が制限される面がある上、書類作成などの管理コストがかかるものが多いのが現実です。また、「行政の下請け」的にていよく丸投げされて使われているだけのこともありますし、政府・自治体トップや担当者が代わると、財源そのものがストップすることもあります。各種財団や企業からの助成や寄付も同様の問題点を持っています。。ただし、スタートアップの段階では貴重な財源がまとまって入る上、ノウハウ蓄積や組織体制を整備できる点では大きなメリットがあります。
一方、NPOの活動に賛同する会員や寄付者、ボランティアからの会費・寄付ですが、欧米の場合、企業からの寄付も含め、これが実質的にNPOを支える収益源になっています。しかし日本の場合は寄付税制がお粗末なのに加え、欧米のような寄付文化がない(日本人が薄情というわけではない)ため、この部分の収益比率が小さいNPOがほとんどでしょう。
最後にサービスの受け手からの利用料・収入ですが、前述のNPOの存在意義から考えると、サービス対価を当の本人から得るのはそもそもムリがあります。
最近はファンドレイジングといった資金調達のあり方がいろいろと検討・実施され、ネットからによるクラウドファンドレイジングなども事例としては出ていますが、過渡期といえる状況です。
よって、「事業型NPO」というものの、自立できる事業をモデル化するのは、欧米以上に難しい面があると思われますが、欧米のように寄付に過度に依存できない(依存しようがない)ことを考えれば、矛盾を含むようでも事業型を目指さざるを得ないのが日本のNPOの現実です。フリーミアム戦略のように、一部の利用者が費用をカバーする、サービスの受け手以外の第三者が費用をカバーするといったモデルの検討も必要でしょう。
「サービスの提供」と「お金の流れ」を図式化し、そのビジネスモデル(仮説)の正しさを検証とするといった、もっともビジネス的なスキルが要求されます。
この本あたりはモデル構築の上で非常に参考になるかも。

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

事業型というより、目的達成のために金もかけずにやる!流行のICT(情報技術)にも依存せずにやる!という点では、富士宮やきそばの事例が参考になります。
ヤ・キ・ソ・バ・イ・ブ・ル―面白くて役に立つまちづくりの聖書 (静新新書)

ヤ・キ・ソ・バ・イ・ブ・ル―面白くて役に立つまちづくりの聖書 (静新新書)


社会起業家にみる問題点
ただ、これらの問題点というのは、確かにNPO独特の課題もあるものの、一般のビジネスでもスタートアップの段階では同じような課題を抱えるものです。NPOの場合は、それらよりも次に示すように、より本質的な問題が3点あるように思われます(注:以下は今回発表された方々個別の問題というわけではありません。一般論です)。

そもそもNPOをやろうというような方々は、だいたいが社会的使命感に燃え、それゆえに金のことを考えるのを「汚らしい」といった感覚を持つ場合が多いようです(「結果的に金がついてくる」という考え方が強すぎる)。すると必然的に、収益モデルを作ることや、営業活動をすることに対する嫌悪感を持ってしまいます。先に触れたように、本来第三者から「金を出してもらう」ことを考えてもらわねばならないはずなのに、むしろそこに注力をしない。近年はこういったソーシャルビジネスへのベンチャーキャピタルやファンド、ハンズオフといった動きも増えているだけに、信頼性の高いビジネスモデル(仮説として精度の高い)の構築とプレゼンテーション能力社会起業家にとって必須のスキルでしょう。

加えて、「自分はこれだけ社会にとって良いことをやっているんだ」という独善性がハナについたり、無礼な態度に出るということも見られます。「こんなに頑張っているのに、なんで世間はわかってくれないんだ、世間はバカだ」と思ってしまう気持ちはわかりますが、これでは本末転倒です。ある社会起業家と話をしたサービス利用候補者は、「あの手の人々は『正しすぎて』疲れる」とこぼしていたという話があります。災害時のボランティアの方々にも見られる現象ですが、「自分は正しい」というのを全面に出しすぎると、こういった逆転現象が起きます。確かに情熱・ミッションは絶対に社会起業家には必要ですが、すべての人が同じ考えを持っているわけではないことを肝に銘じるべきです。

3つ目に、NPOに携わる方々は、意外にも他のNPOや同業者との協働を避ける傾向にあります。NPOの機動力、事業スピードは、他者との協働でドライヴがかかります。自身の事業に思いが強すぎるのか、何かと自身のNPO内で自己完結しようとする傾向が見られますが、組織化の一つとして、リソースの外部調達(特に営業面・後方作業面)はぜひとも考えて欲しい視点です。

日本のNPOの厳しい現状は以下のようなデータで示されます。NPOをやろうと考える方々、私も含めたNPOを支えようとする方々はこの現実が前述のような問題点にあることをご理解いただければと思います。