モチベーションの危機

日経ビジネス11月27日号特別版の記事より。野村総研の齊藤義明氏によるもので、外発的誘引による「お金」では働く意欲は買えないとし、内部でモチベーションを作り出す必要がある(このあたりはリンク’モチベーションの小笹良央氏や、「ワクワク系マーケティング」で有名な小阪裕司氏も以前から指摘しています)と主張し、「VOICEモデル」を提案しています。

Value system approach(カネを超えた存在価値)
Opportunity approach(成長の機会)
Communication approach (情熱の循環)
Innovation approach (創造の楽しみ)
Enpower / Encourage(育てる/勇気づける)
   

数年前にカッツェンバックが「コミットメント・マネジメント」(コミットメントはモチベーション以上の長期に継続するやる気を意味する)で主張していたのとダブる部分が多いのは、やはり普遍的なんでしょうね。
それで、おもしろかったのが、各モデルによる事例。”Value system approach"では、バンダイの「バンダイ・バリュー」が紹介されており、失敗した者に対する「敗者復活人事」を制度化しているそうです。アイデア勝負でヒット商品を生むことの難しい玩具業界にフィットしていますね。要は理念やミッションといった価値を体現化することでモチベーションを高めるという考え方です。

バンダイ・バリュー」

  1. チャレンジャー魂(まずやってみよう!)
  2. イノベーター魂(そこまでやるか!)
  3. エンターテナー魂(やるんだったら面白く!)

”Communication approach"の重要性は指摘するまでもありませんね。上っ面ではなく、情熱を組織に吹き込むコミュニケーションのあり方はもっと企業でも考えられていいでしょう。同記事では、再生企業から復活した熊谷組、日本一の弁当業者である玉子屋などの事例がありました。玉子屋の事例は「すごい!」と思わせるものでしたのでご紹介します。

玉子屋の菅原勇一郎社長は、従業員700人のうち受付や配達など顧客と接触する400人の従業員については、全員と直接面接して年2回の賞与を決めている。これに費やす時間はなんと3ヶ月に及ぶ。それでも菅原社長は「これは自分の大事な仕事」と腹をくくっている。1日6万〜7万食(普通の弁当業者は3000食程度)を配達し、廃棄率0.1%未満(普通は5%程度)という驚異的な効率性は、情熱を持った社員たちがマニュアルなしで達成したものだ。

同じ記事からではありませんが、元バレーボール日本代表で現在はシャルレの社長を務める三屋裕子氏(当時はファンだったなぁ)も、社内のコミュニケーションの活性化を図るために社屋のワンフロアをコミュニケーションスペースに改造し、売上・利益目標をビンゴにしたりとイベントを重視した施策を行ったそうです。これにはいい話が続きます。

「嬉しかったのは、見事ビンゴを達成して特別ボーナスの権利を得た部署が、自分たちだけで宴会をするのではなく、そのお金で駐車場に焼き鳥や焼きそばなど屋台を設営し、全社員にふるまうイベントを自主的に始めたことです。組織の活力の源泉であるチームワークが日ごとに強まっていることに頼もしさを感じます。」

俗に「成果の方程式」というのがあって、これは下記のように示されます。



成果=能力×意欲


カルロス・ゴーン氏は「能力5%、意欲95%」と指摘しました。モチベーションの問題は目には見えにくいものですが、低下すれば確実に組織を蝕んでいきます。経営者に限らず、管理職の方も気を配ってほしいトピックですね。