「イエコノミー」

あけましておめでとうございます。今年はこまめに記事もアップしていこうと思います。


日経新聞は毎年元旦の記事で、その年の大きな動きになりそうなネタを取り上げ、トップ面左の連続記事にしますが、今年が表題の「イエコノミー」。
これは「家庭(家計)が経済への影響をダイレクトにもたらす」時代となってことを示す「家」と「エコノミー」の複合語だそうです。なんとなく今更の気もしないではないですが、記事にもあったように世界一の貯蓄率を誇っていた日本の家庭の金融資産がどんどん流動化しているのをうまく表現できているように思います。
考えてみれば、99年(だったかな)の日本版金融ビッグバン以後、貯蓄からどこに日本の家庭の金融資産がシフトしたのかを2007年の今見るとおもしろいものがあります。土地神話の崩壊、銀行危機により、投資のしどころがなくなったバブル崩壊以後、だからといって保険や年金などにもシフトせず、結局は不動産投信なども含めたリスクが高い債券や株式にいくとは、当時はまったく予想もつきませんでした(状況を整理して考えてみれば当然の帰結でもあるのですが、日本人は金融に関して保守的と思っていたので)。
ましてや昨年のライブドア・ショックでも見えたように予想以上に個人のトレーダーが存在し、しかも彼らが相場を動かすほどにまでなるとは。問題はちっとも個人消費に向かわない点です。だから景気実感が持てない(いいかげんに好景気の定義も変えるべきなようにも思います)。


さーて、ここで政府が考えなきゃならないのは、個人消費を促し、経済成長を実感できる状況に持っていく刺激策ですが、どうやら法人税を下げて企業業績をよくし、それが「結果的に」個人消費の拡大をもたらすというロジックのようです。ただロジシン的にいうと、論理の飛躍があるような気もします。正確には、


法人税率の低減 ⇒ ②企業による研究開発・投資の活性化 ⇒ ③企業業績の向上 ⇒ ④労働分配率の上昇 ⇒ ⑤個人の可処分所得の増加 ⇒ ⑥個人消費の増加 ⇒ ⑦本格的な経済成長


結局この七つのステップは確率論なので、各ステップの確率を考えてみれば、結構無理のある話かもと考えてしまうのも事実。たとえば今盛んにツッコミをくらってるのは上記の③から④のステップですが、①から②を考えても疑問があります。一応政府は、過剰債務は解消したと考えて、減税効果は債務返済ではなく②のストーリーに移行すると考えているようですが、どうでしょうね。単に内部留保する会社が(特に中小は)多いような気がしますし、大企業にしてもリストラが同時に発生し、さらに一部は外国へ収益が流れがちなM&A費用やこれから課題になるであろう環境コストなどリスク回避費用に回る可能性が高いように思います。これを政府の希望する投資と呼ぶかどうかは微妙ですね。さらには④以降の⑤、さらに⑥なんて解説するまでもなくハードル高いステップのように感じられます。


だとするとですよ…仮定に仮定を重ねる話で恐縮ですが、個人の可処分所得が増えても個人消費の増加にダイレクトにつながりにくいとすれば、「じゃあ何をしたらいいの?」という話になります。個人への税率引き下げが意味を持たないこととニアイコールになるわけで、じゃあせめて企業負担を抑えて法人税率下げた方が税収が増えて、社会保障費負担や財政再建の面から考えてもベターじゃないか、という別のロジックは成り立つことになります。

 
ここでややこしいことに、年金・医療・介護などの社会保障諸制度の持続と財政再建という大きな課題(なおこの2つも因果の前後関係がややこしい)は経済成長とは別個でも考えなければならない課題でもあります。しかし上記で見たように、この2つと経済成長は、取り組む順番の問題でもあります。どれから手をつけていくべきなのか。そもそも経済成長のロジックも「企業が先か」「個人が先か」という順番の問題として捉えられていました。この優先順位の問題、実は日本人が一番苦手とする分野でもあります。さてどのように詰めていくのがベストなのでしょうか。言葉を換えれば、現在国民が望むベストな日本の像とは何か、になります。さてそれは「美しい国」(安倍首相)や「希望の国」(経団連御手洗ビジョン)と整合するのでしょうか?