企画はそんなに難しいものじゃあない⑤〜問題の定義・本質的な問題とは、というはなし

前回の復習。現状(Before)を明確にするには、フレームワークを使って分析したり、問題の定義である「問題とは、目標と現状とのギャップである」から、単純に困ったこと、何とかしたいことなどから導きだします。その際、「本当にそれが解決すべき問題か」どうかを確認してください、その1つのポイントは「優先順位」でした。そしてもう一つのポイントが、「本質的な問題か、表面的なものではないか」どうかです。
研修で、「あなたの職場の問題は何ですか?」と投げかけると、よく「コミュニケーションが良くない」「チームワークが悪い」というのがあがってきます。これらのテーマの特徴は、「抽象的」であることです。コミュニケーションが「良くない」とはどういう状況を指すのでしょうか?考えられるのは次のようなものがあります。

・必要な情報が伝わってこない(不足がある)
・伝えられる情報が間違っている(不正確な情報がある)
・情報が伝わるまでが遅い
・どこに必要な情報があるのかがわからない
・そもそも必要な情報と不要な情報が区別されていない

このように、ひとえに「コミュニケーションが良くない」といっても、いろんなパターンがあります。そして原因もそれぞれ違うであろうことが想像でき、原因が違うということは、解決策も変わることを意味します。よって、現状を定義するにはできるだけ具体的に表現をする必要があります。
加えて、上記のようなコミュニケーションの現状があったとしても、具体的にどう困っているのかがわかりにくい点も問題です。よくよく考えれば、コミュニケーションにせよ、チームワークにせよ、仕事の上で成果を出すための「手段」に過ぎません。つまり現状をきちんと明確にするには、コミュニケーションやチームワーク絡みで発生しているトラブルを問題テーマとした方が企画を立てる上では取り組みやすくなります。
たとえば、コミュニケーションに関することなら

・顧客対応が遅れ、クレームが発生している
・情報漏れがあって、何度も顧客に再度確認することが発生している

といった感じです。このように問題テーマを変換すれば、問題を定量的(データ・数量)でその大きさを確認できます(問題の大きさとは、目標と現状のギャップの大きさです)。
クレーム発生なら、その「クレーム件数」、情報モレなら「再確認件数」や「再確認にかかった時間」などを取ればその大きさがわかります。
定量的に問題に関する現状が把握できれば、対策を打った結果、改善できたかどうかが一目瞭然でわかります。次の事例を見てください。

「コミュニケーションが良くない」(現状)→「コミュニケーションが良くなった」(改善後)
「顧客対応が遅れ、クレームが1ヶ月に20件発生している」(現状)→「顧客対応の遅れに関するクレームが1ヶ月に3件まで減った」(改善後)

いずれも後者の方がわかりやすいですね。
つまり、現状について数字でその問題の大きさをつかむことは、企画の結果である改善後の成果を評価しやすくします。また、問題の大きさによって、解決策が変わることも理解されるでしょう。次の事例を見てください。

・営業利益予算まであと10万円ほど足りない→(対策)節約によるコスト削減
・営業利益予算まであと1億円足りない→(対策)根本的な事業再構築

話を戻しましょう。「コミュニケーションが良くない」という問題テーマは、おそらく直感的には正しい認識だと思われます。しかし、より具体的な問題現象に捉え直して「顧客対応が遅れ、クレームが発生している」となった場合、その原因はコミュニケーションだけではない可能性があります。たとえば、情報システムの不備であったり、職員の業務スケジュールの問題であったり、他の業務との重複であったり、業務委託先の連絡遅れだったり、ということも考えられます。より本質的な問題とは、手段やあいまいな状況を問題とするのではなく、その結果である問題現象や具体的な状況を定義し、それを定量的に数値やデータで把握することによって、本当に解決すべき事柄が見えてくる、ということです。第2回の説明に合わせれば、問題現象(Before)は、SMQCDMSやムダ・ムラ・ムリの観点から具体的にとらえ、数値で表現する必要があるということです。