介護殺人をめぐる考察

Twitterにて、大学院に通われている@sinarisamaさんのご了解を得て、介護殺人予防研究の第一人者でいらっしゃる湯原悦子准教授(http://www.n-fukushi.ac.jp/kenkyu/kyouin/fukushi/yuhara.pdf)の講義内容を掲載します。こういう研究がどんどんなされ、介護システムの改善に役立たれることを期待します。

(20100419_1)介護殺人はいわゆる怨恨殺人ではなく「被害者」を安楽死「させてあげよう」という動機から行動に踏み切った事例が多く含まれる。
(20100419_1)介護者による高齢者虐待は改正介護保険法が施行されても尚、減少の兆しが無い。「介護保険法で介護者は救われる」と歓迎された同法だが、そもそも介護保険法によって「救われた」介護者は 要介護者を虐待しない者が殆どである。という統計。
(20100419_1)高齢者虐待の事例に関して介護家族に聞く質的調査法は果たして事実を反映するだろうか。という疑問。更には、虐待に関わっている家族が被虐待者についてどれだけの事を理解しているのか。
(20100419_1)介護殺人。「なぜ行動に踏み切る前に、誰かに相談しなかったのか!」「人様に迷惑を掛けるなと育てられてきた。糞尿をタレ流す親を施設に預けたら職員に迷惑を掛けるだろうし、他の利用者からイジメられると思った」 こういった「家族在宅介護者」は大勢居る。
(20100419_1)夫が介護者の場合。「これまで世話をしてくれた妻への恩返し」という意味で、甲斐甲斐しく世話をするケースが多い。んでもって家事が不得手であるケースが重なると負のスパイラルとなる。ダメ押しで認知症が加わり、妻から「あんた誰?」と言われた瞬間に心が折れる
(20100419_1)現在の介護殺人予防研究の傾向としては、主に家族介護者を保護する為の制度である「介護者法」の成立を目指して議員も交えた研究会が展開されている。
(20100419_1)認知症高齢者のみならず、境界性人格障害など、介護者に対して無自覚ながらも辛く当たる故に介護殺人に至るケースが後を絶たない。主介護者が報われる制度の成立が強く望まれる。

レスパイト・ケア(介護者の心身ストレスを軽減する)としてショートステイやデイ、訪問介護がもっと利用されるべきなんですが、要介護度による上限はあるは、これまでの経緯で要介護度は低く変更させられるはで、とても当初の意図通りに機能しているとは言い難いのが現実。また湯原先生の指摘にもあるように、家族サイドも利用がためらわれる心性もある(制度が複雑すぎて理解しにくいこともあるでしょう)ことを踏まえ、よりよい制度の確立に期待したいものです。