スターバックスの苦悩とモスバーガーの共通点

「スタバがトヨタ式『カイゼン』で急回復」という記事が出ていましたが、この記事でも触れられているように、トヨタ式のカイゼン導入は標準化を過度にもたらし、ブランドとしてのスターバックスの力を弱める可能性があります。だいたいトヨタの車ってあまり面白みはないでしょ?品質は素晴らしいけれども。
スターバックスに話を戻すと、今から10年ほど前に日本に広まりだしたかと思いますが、この手のコーヒーショップは確かに珍しい存在でした。要はコーヒーというよりも喫茶空間を顧客に提供するというコンセプトのもとに、女性ユーザーを獲得したのが同社の戦略ですが、当時この戦略は「ニッチ」か「差別化」か、と大学院のころ議論をしたことを思い出します。
「ニッチ」とは「すき間」の意味ですが、大手や同業他社がまともに相手にしないターゲット市場に絞り込んで独占状態を作る戦略で、「差別化」はトップ企業との品質などの差異化によって独自性を保ち、市場を確保する戦略です。スタバが出た当初は間違いなくニッチだったと思うのですが(同社のバラエティコーヒーなどのメニューも含め、真似ができないと感じたので)、その後タリーズやエクシオール・カフェが台頭し、それなりにシェアを得たことを思うと、ニッチとは言い難いようです。その背景にはスタバがある意味で成功事例として露出し過ぎたためにブランドとして飽きられた点もあったでしょう。

スターバックス成功物語

スターバックス成功物語

  • 作者: ハワードシュルツ,ドリー・ジョーンズヤング,Howard Schultz,Dori Jones Yang,小幡照雄,大川修二
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 1998/04/23
  • メディア: 単行本
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同じような事例にモスバーガーがあります。モスも品質と食事空間の提供をコアとしてニッチ的に拡大したハンバーガーチェーンですが、同社の場合、脱サラした創業者のため、資金がなかったことから結果的にニッチ戦略的になったという事情もあります。しかし同社にしてもフレッシュネス・バーガーや規模は小さいながら非マクドナルド化によってモス化したショップが多く出てきており、相対的にブランド力が低下したように感じます。またクーポン発行など本来は同社の路線ではないマクドナルド的な低価格競争に出た(客数増を狙ったものと思われる)のもこれまでのロイヤルカスタマーの離反をもたらし、裏目に出てしまったように感じます。
スタバにせよモスにせよ、ここ数年は業績が停滞し、新機軸を出せないまま相対的なブランド低下が続いています。スタバは創業者ハワード・シュルツの復帰とトヨタ方式導入によって体力回復を、モスはミスタードーナツとの協業(ミスドマクドナルド的なビジネスモデルのため、このコラボはミスマッチと思うのですが)によって生き残りを図っていますが、もともとの両者のブランドイメージや戦略から考えると、強みのさらなる強化という戦略が王道ではないかと思います。結局にニッチではなくなったわけですから、その確立した市場の中でトップ企業としての強みをフルに発揮していく戦略性が問われるのではないでしょうか。
いっそのこと、スタバとモスでコラボすればいいのに。
モスのココロ―モスバーガーハートフルブック

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追伸:
そういえばコーヒーは最近マクドナルドとミスタードーナツが高品質・低価格で売りにしているポイントですね。立地的にもスタバの強いライバルですね。