百貨店が大変…って今に始まったことじゃなし
無事熊本に着きました。やれやれ。
さて、なかなか暇がなくて読めなかった東洋経済の特集を電車の中で読みました。
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2009/01/19
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そもそも百貨店は「構造不況業種」認定されてかれこれ20年以上経つわけで、愛着があるとはいえ、これだけ変化に対応できていない(M&Aも異常にペースが遅い)となると擁護が難しい面もあります。百貨店の構造不況とは、一般に以下のような要素をいいます。
上記のような特徴から、固定費を抑える、あるいは変動費化する過程で、販売員がメーカーからの派遣店員になり、買取商品比率はどんどん落ちて消化仕入(売れた分だけ仕入れが立つ)というようなことを常態化していったため、販売力も商品開発力も在庫管理能力も落ちて行き、百貨店は単なる場所貸し業としかいえなくなりました。旧態依然としたイベント催事に、品ぞろえもどの店にいってもそう変わらない。だから客が来なくなる…という悪循環(デパ地下ブームは品揃えにおいて差別化していたからこそ起こった現象でしょう)。
かつて百貨店の営業戦略スタッフだった頃、ぞっとするデータをよく見たものです。当時、私の勤めていた百貨店は一応鉄道とリンクしたターミナル百貨店だったのですが、それでもカードホルダーの購買履歴分析をしてみると、50%以上が年1〜2回の利用、1回あたりの滞留時間は30分以下でした。
つまり、もう私がいた10年以上前から、百貨店は顧客離れが続いており、「いろいろあるけれど買うものがない」としかいいようのない顧客行動を示していました。
もちろん百貨店もそんなことはわかっていましたし、いろいろな手を打って試行錯誤していたのは事実ですが、大きな変革は今日まで起きていないのです。伊勢丹が一応業界内の勝ち組とされてきましたが、それも北海道の丸井今井などの例を見る限り現在はかなり微妙になっていますし、新宿の伊勢丹本店が、日本橋の三越・高島屋、池袋の東武・西武といったそれぞれの旗艦店と比べてそれほど競争優位性があったのかというと正直わかりません。
さて、東洋経済の特集では主として百貨店業界の動向をM&Aによるグループ再編の中で分析しています。逆にいえば、それくらいしか大きな動きがないというわけでもありますが、これについても非常に疑問があります。規模の経済性が働きにくい、エリア特性による購買行動の差が非常に大きい百貨店という業態では、この意義がよくわからない。シナジー(相乗効果)の出る面がわからない。記事を読んでもそのあたりが見えてこない。せいぜい店舗のスクラップ&ビルドがやりやすいため、財務体質が改善すること、店舗数が増えることから人材のキャリアパスが多様化し、経験知が上がるくらいしかメリットが感じられないのですが。少なくとも品揃え(MD)や強みなどの補完関係でシナジーが発揮できるとは到底思えません。
私も既に業界から離れて10数年経つので、私の認識が間違っているかもしれませんが、外から見える&記事からみえるレベルでの情報を総合してロジックを組み立ててみても、かなり厳しいと思います。百貨店の経営・競争戦略をどう考えるかは、またそのうち書いてみたいと思います。