待ち時間の解消

病院のTQMのテーマによく出てくるものとして、「外来の待ち時間の解消」というのがあります。大学病院でよく揶揄されるような「3時間待ちの3分診療」というのはさすがに今ではそれほどないでしょうが、病気で体力が落ちている患者様の身としては、やはり通常以上に待ち時間はつらく感じられるものです。


さて、では待ち時間解消をQC(品質管理)のアプローチで行うと、まずは現状把握なので、待ち時間がどういう状況で発生しているのかをデータで確認する必要があります。すると、どんな調査項目が必要かというと…


  • 診療科目別(場合によっては医師別)の待ち時間
  • 時間帯別の待ち時間


をサンプリング的に採ったデータがベースになって、その中で特に時間がかかっている人の処置状況などを詳細に見るというのが定石です。しかし、この後に目標を設定することを考えると、単に待ち時間の現状のデータだけでなく、「患者様にとって『長い』と感じさせない時間とはどれくらいか」というのを一方で把握しておくと、よりよい適正目標が設定できます。
待ち時間ゼロは現実的には無理ですし、本当にやろうとすると粗診治療にもつながりかねませんから、どこまで短縮するかの目安として患者様の「体感時間」というものをデータとして押さえておくことは重要だと思われます。
ただし、実務ではこれをアンケートでデータを採っていくでしょうが、その際に「あなたが『長い』と感じるのは何分ですか」「あなたが我慢できる待ち時間は何分ですか」という問いを設定しないようにしましょう。なぜなら、この場合の時間とは体感の推定によるもの(そういう意味ではむしろ語感)で、きわめて大雑把だからです。たとえば「10分」という答えがある場合、これを言葉で見ると「ちょっとの時間」でしょうが、実際に10分間待ってみると「かなり長い」と感じられることもあるでしょう。したがって、データを採るときには「今日は長く感じた」と答えた人の待ち時間のデータを実際に採る方が正確だと思われます。事実、外食産業ではそういった形で標準待ち時間とでもいうべきものを設定して待ち時間を管理しているところもあります。


QCでは「主観のデータ化」とでもいうべきものはどちらかといえば敬遠されがちではありますが、CS的なテーマによっては、主観をデータ化することも大きな意義がある場合があります。