待ち時間(待ち行列)の科学

私は前職がデパートでしたので、レジの待ち行列については非常に興味がありました。実際にレジごとの時間帯別客数を調査し、最適レジ台数を設定したこともあります。大学院時代にはパソコンのエクセルを使って、待ち行列をシミュレーションするという講義もありました。待ち行列に関しては、特にスーパーマーケットや銀行が研究の先駆者とでもいえる存在だったようです。レジや窓口数の最適化、それにともなう人員の変動化によるコスト削減がテーマでした。


ところが、病院の待ち行列は、スーパーや銀行のそれと簡単に比較できない点が多くあります。ゆえにQCでの待ち行列解消は困難だという結論になり、どちらかといえば「ポケベルで呼び出す」といった待ち時間を感じさせない対策の方に力を注いでいるという経緯があります。
病院でこのテーマが難しい理由は以下のような要因によります。


  • 患者の来院パターンがつかみづらい…初診や緊急時などイレギュラーな来院も多い。これに診療科目、季節要因のファクターをかけるとさらにパターンが複雑化する
  • 待ち時間のボトルネックが診察にある…検査や精算などは、ある程度業務が標準化できるため、時間の見通しが立つが、医師の診察はその医師の技術だけでなく、患者の疾病・状態が診察時間に影響を与えるため、パターンが無数となり、標準的な時間が設定できない。したがってボトルネックが診察にあることがわかっているにもかかわらず、手が打てる余地が少ない。


私の少ない経験範囲では、時間短縮に徹底的に手を打った病院の事例を聞いたことがないのですが、どなたか事例はお持ちではないですか? 完全予約制ができればかなり待ち時間は短縮できると思いますが、医療というものの特徴と公益性などの観点から考えると、これも難しいですね。