SNSはソーシャルビジネスにどこまで使えるのか??

Facebookで反響があったので、ちょっとブログにも掲載します。
最近盛んにSNSソーシャル・ネットワーク・サービス)などのツールを使って地域や人的ネットワーク化を進めて、世界や社会を変える!みたいな話が多いんですが、そんなことがどこまで可能なんでしょうか?
事例としてすぐに思い出すのが、昨年来の「アラブの春」に代表される、旧政権打倒の動きに、SNSでの世論形成があった、とされるものです。これは本当のところどうなのかの検証がきちんとされていないのですが、日本でも昨年の震災でtwitterがフル活用されたように(私も使った1人ですが)、SNSが持つ可能性のようなものは否定できないように思います。
現在での日本でのSNSの論点は、ソーシャルビジネスでの活用であり、実際多くのNPO社会起業家、あるいは地域活動に熱心な個人がSNSを使って活動を促進しようとしています。
しかし、かつてのITブーム(古くはWindows 95以降のPC普及期のソフト開発、業務効率化の促進、2000年代のITバブルにみるネット活用のビジネス)でわかるように、Officeソフトであろうが、ネットサービスであろうが、ITはやはりビジネスの「手段」でした。言い換えれば 、ITそのものが収益を生むというより、ITを使うビジネスモデルが収益を生み出すというのが正しい理解でしょう。特にフリーミアム戦略(サービス無料で収益を上げるもの)はITによるコスト低減が必須であったのは間違いありません。
さて、ではソーシャルビジネスのように地域活性化や福祉といった領域でSNSを使うことは「手段」なのか、それとも従来とは違って手段そのものにビジネスとしての意味があるんでしょうか?
これを考えるには、ソーシャルビジネスの最大の特徴である、「支持者・動いてくれるメンバーを集める」ことに着目をしましょう。NPOに代表されるように、ソーシャルビジネスはそのビジネスそのものが生み出す収益に加え、支持者による会費・寄付収入や政府・自治体による補助金収入などがあります。事業の内容によって収益源の割合は変わるものの、事業の存続を考えると、それらの収益源をそれぞれ検討し、確保する必要はあるでしょう。そうなると、いかにして支持者や働いてくれるメンバーを探し出し、アプローチをし、組織化し、成果を出していくかがポイントになります。SNSはこの点において、非常に有用だと考えられているようです。

上記の図はタックマンという人による、チームビルディングの理論(組織進化モデル)です。タックマンモデルでは、形成されたチームは、いきなり機能するのではなく、次の4つのステップを経て初めて機能すると解説しています。
それぞれのステップの意味は次の通り。

1.形成期(Forming)
チームが互いのことをよく知らない状態。
2.混乱期(Storming)
チームメンバーの役割や責任の所在について意見が出され、対立が発生する状態。
3.統一期(Norming)
チームメンバーがお互いの考え方を受容し、役割・責任の所在が明確になり、行動規範が生まれる状態。
4.機能期(Performing)
チームに一体感が生まれ、チームが機能する状態。

上記のように「形成期」のあとは「混乱期」が必ず来ることになっています。結局、SNSは「形成期」までの時間短縮にはなるものの、その後はやはり「混乱期」を迎えることでは従来のネットワークと変わらないだろうと私は考えています。果たしてその後の「統一期」「機能期」を迎える事例がどのくらい出るか。
少なくとも現在のソーシャルビジネス系を中心としたSNSの活用は、まだまだ成果を生み出しているとは言いがたく、ネットワーク化自体が目的化している感があって、それって異業種交流会の名刺集めと変わらないんじゃないかという危惧を持っています。
水をぶっかけるようで申し訳ないですが、SNS上のネットワークはこのように現時点ではヴァーチャルに毛が生えたレベルで、Facebookの「いいね!」ボタンをあまりに気軽に押せる仕様に代表されるように、コアなメンバーを集める点では難しいのではないでしょうか。実際、企業などのFacebookページの「いいね!」を押した人の再訪問率は非常に低いというデータも出ています。
要はドラッカーが「非営利組織の経営」の中で指摘したようにそのネットワークの「ミッション」が曖昧なもの・実益(収益というより便益)が認められないものは一時的な関心を惹いてもいずれ消滅するでしょう。その後はそのネットワークの協力な推進役となるリーダーシップがカギとなることもドラッカーは指摘していますが、結局のところ、薄いつながりであるSNS上のネットワークの「形成期」をいかに強化していくかは、従来のプロジェクト・マネジメントのようなある種アナログな能力が必要なのでしょう。

ドラッカー名著集 4 非営利組織の経営

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