おもちのリスクとその対策

さて、お正月はおモチを食べる機会も多いかと思います。が、毎年のことながらこんなニュースが。

餅詰まらせ6人死亡=40〜90代の男女24人搬送―東京
時事通信 1月2日(日)18時50分配信

 島しょ部を除く東京都内で1日から2日午後8時現在までに、雑煮の餅を喉に詰まらせるなどして24人が病院に搬送され、うち6人が死亡したことが2日、東京消防庁などのまとめで分かった。
 同庁によると、葛飾区の男性(72)が1日午前8時ごろ、餅を喉に詰まらせ椅子から崩れ落ち、渋谷区の男性(70)、足立区の男性(82)、葛飾区の別の男性(82)も同日、それぞれ自宅で雑煮を食べた際に餅を喉に詰まらせ、死亡。2日にも八王子市の男性(80)と足立区の男性(95)が死亡した。
 他に40代から90代の男女18人が餅を喉に詰まらせ意識を失うなどした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110102-00000033-jij-soci
  (※なお、3日22時現在の最新情報では31人搬送、7人死亡とのこと)

数年前、こんにゃくゼリーの窒息事故で大手食品会社が販売中止するといった事件がありましたが、リスクという観点からはモチの方が圧倒的に問題なのはよく知られています(注:こんにゃくゼリーのリスク問題の本質は発生件数ではなく重傷率がモチ以上に高いことのようです)。
消費者庁の食品SOS対応プロジェクト報告書(平成22年7月16日)http://www.caa.go.jp/safety/index2.htmlによれば、事故件数が最も多いのがやはりモチ(406件)で、2位のご飯(260件)を引き離しています。それ以上に注目すべきはその事故のうちの重傷以上の発生率。これが54.7%と非常に高いのです。
また、東京消防庁(の平成18〜19年の年末年初のデータによれば、年代別傷病者発生数の割合で見ると、70代以上が69%(60代まで含めると88%)となっており、嚥下能力の落ちた高齢者の事故が多いのが目につきます。
高齢者介護施設でもモチのリスクの高さから餅つきの行事を取りやめたりといったことも起きているようですが、嚥下能力が落ちるとどんな食物でも誤嚥や窒息のリスクはあるわけで、それは確率の問題でしかないのです。となれば、リスクマネジメントの王道ですが、予防と事後処置が重要になります。で、これまた一部の福祉施設の悪い傾向で、これらのリスクに対して「見守り強化」といった無理難題&効果の薄い施策が多いのも事実ですが、冷静に考えて「見守り強化」は予防策ですらないわけです(見守り強化で得られる効果は事故発見が早いだけ)。目的性と効果、実現可能性を考えて対策を検討しなければなりませんね。
予防策としてよく施設でも聞くのは、小さく切る、水分量を増やして柔らかくする、大根などを使用したモチの代替え食(http://kazuko.ciao.jp/rice_cake_tender.html)を準備するなどですが、嚥下食用のモチの作り方(http://www.yk-forum.jp/?p=378)もあるようです。
また実際に窒息が起きてしまったらどうするかについては、このあたりをご参照。
http://www.medical-tribune.co.jp/kenkou/oukyu-02.html
http://focus.allabout.co.jp/contents/focus_closeup_c/1480/71618/index2/
高齢者の場合、モチと一緒に入れ歯やそのブリッジが内臓にひっかかるといった危険性もあるようです。また、ハイムリック法(ハイムリッヒ法)と呼ばれる異物除去の方法がよく知られていますが、これについてのリスクや掃除機による吸引の問題点も知っておいて損はないでしょう。http://ops.umin.ac.jp/ops/jijou/jijo_12.html