セブンイレブンに排除命令

セブンイレブンが、フランチャイズ店舗の値下げ販売禁止について排除命令を受けました。
よく知られているように、フランチャイズ・システムというのは、オーナー側が出資+利益からのロイヤリティ(ただしこれは売上額だったり営業利益だったり経常利益だったりする)を支払う代わりに、本部が看板とノウハウを提供するという形で成立しています。セブンの場合、契約内に期限切れ商品の原価はオーナー側が負担する形になっており、これはたぶんセブンだけではないと思うのですが。
この問題は実はなかなか根が深い。独占禁止法の観点やフランチャイズ・オーナーの視点から見れば至極真っ当な話のような感じがします。オーナーにとっては特に、本部が決めた品ぞろえの商品が売れ残るというのは、商品力の問題の場合、「ふざけるな」という思いには当然なると思います。しかし一方で商品数量の決定権はオーナーにあるわけで、また在庫権もオーナーに移っていますから、そのリスク部分である売れ残りの負担をオーナーが持つのは、これはこれで当たり前という考え方もできます。
要は売れ残りが出ないような品揃え(MD・マーチャンダイジング)の問題とロス・コントロールの問題が「売れ残りの廃棄処分」という現象の背景にあるわけで、コンビニの場合、売れ残りの価格変更も認めないということは実質ロス・コントロールの裁量幅がきわめて少ないことを意味します。現場用語であれば「見切り」ができない、禁止されているということ。オーナー側からすれば、見切りのロス・コントロールができないならば、品揃えを良くするか膨大な売れ行き情報を持っている本部側が発注数量をコントロールしてしかるべき、という言い分になるでしょう。
さて、もう一つ別の問題ですが、値下げのような見切りのロス・コントロールは、一般に価格に対する顧客の信頼性を失わせる、というデメリット面があります。本部が値下げを禁止したのは、実は本部が見切りによるロスを負担することを嫌ったというより、定価販売が基本であるコンビニに価格変動の要素を持ち込むことを嫌った結果であると思います。
スーパーのように閉店時間があるならば、見切りは一日の中のメリハリとして、良いものは早く買わないとなくなるからという理屈は通るのですが、コンビニの場合は24時間営業ですからそれができません。結果、新しい商品が売れず見切り品に顧客が流れ、粗利が減る(=本部へのロイヤリティが減る)という悪循環にはまりかねません。
「捨てるなんてもったいない」という理屈は店舗運営にとってはかなりどうでもいい話で、利益との兼ね合いにおいてフランチャイズオーナー対本部、あるいは顧客対オーナー&本部というかなり複雑な問題をこの見切りは含んでいます。単純に「セブンイレブンの搾取だ!」という話で終わるものではないと考えます。読売の記事はそのあたりをかなり正確に記述しています。↓
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090622-00000614-san-bus_all
ところで、コンビニのオーナーになることを「独立」ということに世間一般ではなっていますが、フランチャイズ・システムってどうみても「独立」ではないんですよね。品揃えやロス・コントロール、販売促進の権限があって初めて独立といえるでしょう。極端な話、店舗の収支管理部分しか権限がないわけで、それってせいぜい「会社の管理職」レベルですよね。