意味のあるムダ

で、上の記事からのある意味で続き。
プレジデント2月2日号に、神戸大学大学院教授の加護野忠男氏がいい論文を書いています。経済危機の中、多くの企業が無駄な仕事の見直しを進めていますが、日本の慣行や仕事には、人々が意識すらしていない「目に見えない機能」(潜在機能)が多いということです。
その一つの例として、日本の銀行の例があがっていました。日本はそもそも間接金融(市場からではなく銀行などの金融機関からの資金調達)が多い国ですが、とりわけ中小企業の比率が高いそうです。中小企業の融資は大企業や富裕層の個人に比べ一般にリスクが高いですから、逆にいえば日本の銀行がこれをうまくコントロールしていたということになります。なぜそんなことができたのかというと、昔日本の銀行は顧客会社に行員を派遣して、小口の現金出納を手伝うというサービスを行っており、これが定性的なリスク管理情報の収集に役立っていました。ところが、コストがかかり過ぎるという理由でこのサービスが廃止され、それに伴い中小企業の怪しい財務諸表だけでしか判断できなくなり、与信管理スキルが落ちたということです。同じような例には1円でも金額が合わないと退社できないという慣例も、残業代との費用対効果でなくなってしまい(これは知りませんでした。まだやっていると思ってました)、お金に対する厳格な姿勢が失われたというものがあります。
このような「有益なムダ」の代表的なものの一つに5S、QC(品質管理)活動があると加護野教授も指摘していますがまったく同感です。
当然ですが、このような潜在機能があるとはいえ、費用対効果はやはり無視できないので、より効果の高い「ムダ」な活動の選択肢があればそちらにシフトすべきでしょう。ただ難しいのは、この潜在機能は当事者でも説明が困難なことだそう。なるほど、としかいいようがありませんが、危機的状況だからこそ、冷静に「本当のムダ」と「有益なムダ」を見分けたいものです。