コムスンの問題と企業の責任の取り方

介護事業大手のコムスンが、不正行為により全国の事業所の新規指定と更新を、2011年12月までできないようになりました。コムスンは昨年買収した連結子会社日本シルバーサービスに事業を譲渡して対応を図りましたが、厚労省としては難色を示しているが認めるそうです。しかし、この問題の本質は介護保険制度(介護報酬)のあり方にあります。ビジネスとして成り立ち得る状況か否かという点も含めてですが、これはまた別の機会に。


コムスンの意図もある意味で理解できます。まずスタッフも異動させることで雇用の問題が解決できます。そして何より利用者にサービスを継続でき、不利益を与えずに済む点で現時点で取りうるベストなスキームだったでしょう。

しかし、連結子会社ですから、コムスン本体は売上が落ちても、ヘルパーや事務スタッフも含めて子会社に渡せば、連結上業績は下がりませんし(ただし株価は落ちますが)、直接サービス提供する事業者の名前が変わるだけで、親会社であるコムスンのコントロール下に置かれている上に、処分対象が子会社ではないために新規指定を取ることが理屈上できてしまいます。これでは懲罰の意味がなくなってしまいますから、こんなことは道義上許されないでしょう。

風評で語ってはいけませんが、コムスンは経営者がグッドウィル(折口氏)になってから、急成長したものの常に問題をはらんできました。安易な地域拠点の拡大やヘルパーの採用(素人を大量に採用し、大量の離職を見込むやり方)、勤務状況のあり方も介護事業関係者の間では評判は芳しいものとはいえませんでした。はっきりいえば、介護事業者としてのミッション(理念)があまり感じられない会社という印象を持っています。もっとはっきり言えば現場のヘルパーを使い捨てる、というイメージを持っています。

それでも多くの拠点を抱え、在宅介護(しかも24時間)の多くを担ってきた同社の貢献は認めなければならない面があり、それだけに今回の事件は非常に残念です。


では現実的な今後の対応について考えてみましょう。

まず、経営陣は総退陣すべきです。同社の場合、やはり前述のようにミッション、ビジネスモデルをはじめとする経営陣の経営判断のあり方に問題のほとんどを求めることができます。
次にサービスの継続提供の点から、日本シルバーサービスに事業譲渡することを認めます。その際、ヘルパーやスタッフの転籍も認めます。ただし、コムスンからの連結を外します。買収時点の額で、その分の減資を行い、再度増資をすることにします。そうすれば売却による利益はコムスンには入らず、損失もこの分に関しては出ません。ただ増資にはタイムラグがあるため、一時的に国営化するしかないでしょう。国営化は金融機関を除けばきわめて異例なケースですが、コムスンんの利用者6万人という規模の大きさによる影響を考慮するというのなら、さらにもともと措置制度から民間参入できる介護保険制度に切り替えたという責任上、そうすべきではないでしょうか?

連結外しなど、このあたりは私は制度をよく知らないので、論理を追って行っただけのアイデアではありますが、みなさんはどう思われますか?

ついでに余談ですが、会社の責任の取り方として、よく経営陣や責任者の減俸ってありますよね。あれもコムスンのパターンと同じで、実は対外的にはあまり意味がない処分だと常々思っています。だって、会社としての人件費が落ちるだけで、営業利益はむしろ増えることになるからです。もちろんそれ以上に売り上げが落ちることもあるでしょうが、減俸だけというのは内部的な意義しか基本的にはないと思います。


あ、それから福祉や医療は儲けてはいけないという意見には私は賛同しません。今後絶対出てくる論調でしょうが。もちろん儲け過ぎは問題ですが(レベルはよくわからないけれど)、儲けてはいけないというのなら、重税社会を受け入れることになりますが、それほど私を含めた日本人は成熟していないように思います。