逆張り経営 GILBERT O'SULLIVAN / "Back To Front"

サッカー・ワールドカップも開幕し、いよいよ今日は日本チームが出陣ですが、サッカーにそこまで入れ込んでいない私のような人間は実は「少々ウザったいなぁ」と思っています(ファンの方申し訳ない)。
どうやら開催地ドイツにも同じような思いを持った方はいるようで、ドイツでは「サッカー中継を一切流さない」ことを売りにしたホテルやバーが登場しているようです。この視点はなかなか鋭い。要はワールドカップだからって開催国の全国民がサッカーに熱中しなければならない義務はないわけで、とはいうもののそういう人はマイノリティー(かどうかは本当はわかりませんが)である以上、ひっそりとしておかなければならないのも事実。そういう意味では多数・メインストリームとは裏のニッチ(隙間)的なニーズに対応するビジネスが登場するのは、実は健康的な現象ともいえます。


こういうのを「逆張り経営」といって、あえて世間の主流に逆行するような戦略を、商品・サービス戦略やオペレーションに組み入れることによって、独自性と利益を確保することが事例としては結構あります。
たとえば、イトーヨーカドーに対するドンキホーテや100円ショップで有名なダイソーマクドナルドに対するモスバーガーなどがそうですね。


イトーヨーカドーは流通の雄であり、チェーン・オペレーションの完成形ともいえるものです。そのポイントは単品管理に基づくMD(マーチャンダイジング、品揃え)と商品陳列・導線ですが、これは基本的に売り逃しロスと廃棄ロスを排するための「効率性追求」の施策であるため、追求すればするほど無機質・無個性な売場になりやすい問題があります。ムダのない買い易さを提供した副作用とでもいうものですが、その逆をいくのがドンキーホーテとダイソードンキホーテはかつて火事で問題になったように、陳列・導線をあえて無視し、「宝探し感覚」を顧客に提供することによって成長した流通業です。ダイソーも単品管理を否定し、欠品商品は補充せず、かわりに新製品を棚に並べるというやり方により売場の「鮮度」を保っています。この2社の共通の特徴は、「顧客が目的買い以外のついで買いをよく行っている」という点です。既存の流通業では、イチゴの横にコンデンスミルクを置くなどの関連購買の促進や買い物カゴの配置による「空間を埋めたくなる欲求」促進をよくやりますが、この2社はもっとランダムに、いわばカオス(混沌)状態を売場で作ることにより、「モノを売る」というより、「買い物空間・体験を提供する」ことを追求しているように見えます。


このような逆張りは、実は緻密な戦略とオペレーション設計が必要であり、さらにハズれることも実際多いと思われますが、世の中は常に2つの面があることを考えることは、ビジネスにおいても重要ではないかと思います。「株価が下がってる」ことを憂えるのではなく、「代わりに国債の利上げが見込める」「為替の動きに注意する」「いっそのこと自己投資する」などといろんな策が一方ではあるわけで、直線的思考・視野狭窄は時に思考停止に結びつくこともあることを理解しなければならないなーと思います。


あ、マックとモスについてはまた別の機会に。