百貨店の福袋のヒミツ

初売りの福袋、よく売れるんですが、アレって本当のところの価値はどうなのだろうか?という疑問にお答えします。もっとも私が百貨店にいたのはもう10年以上前なので変わっているかもしれませんが…。
まず原価ですが、どのくらいかというお話から。
百貨店の福袋の企画は、原価率(逆数の利益率)という観点よりも、当たり前っちゃ当たり前ですが、定価からどの程度お得かという観点で行われます。商品カテゴリーによって異なりますが、だいたい5倍以上の価値はあると思って良いでしょう。私がよく知っている食品の福袋で言えば、1000円の福袋でズワイガニ缶1個が入っている時点でこれは通常価格が1000円、原価が700円くらいです。これにレギュラーコーヒーやビール、チーズ、ハムなど10数種入っていましたので、ざっと見て定価で5、6000円は十分にあると思われます。
そんなことをやってデパートは儲かるのか? めちゃ儲かります。その仕組みについて語るには裏話があります。ただし、今はどうかわかりません(が、それほど変わっていないでしょう)。
さて、その裏話。福袋に詰めている商品は、通常扱っている商品を入れており、それをディスカウントしている、と思われている方も多いかと思いますが、実はそういうものだけでもないんです。
前述の食品の福袋の場合、食品メーカーや卸からの「協賛品」として無料で提供されているものが多くあります。よって、その部分については原価はゼロ。メーカーはおそらくこの協賛品は販売促進費で経費計上しているでしょう。もしくは歳暮ギフトの残在庫を処分するための見切り品として、売上原価にそのまま含んで(よって売上はゼロ)いるパターンもあろうかと思います。このギフト品処分はよく百貨店で「ギフト解体セール」として行われているもので、メーカーや卸、あるいは百貨店が余らせたギフトセットを定価の半額の80%で出すこともありますが、福袋にも入っています。何しろ食品は賞味期限がありますし、特にナショナルブランドの百貨店向けギフト品は毎年デザインが変わるのが一般的なので、この時期に処分するしかないんです。
一方、衣料品系ですが、ブランドショップではない百貨店の自主運営の売場(俗に「平場」と呼ばれる)の福袋は玉石混交です。シーズンの売れ残り品ももちろん詰めますが(これも食品同様、マークダウンと呼ばれる価格・原価変更の処理を行い、利益を確保します)、「持ち越し在庫」と呼ばれる1シーズン以上前の品を入れることも(これは返品が利かない商品なので、原価はそのまま持ち出しになります)。そして、実は「福袋専用商品メーカー」からも仕入れています。私はアパレル系を経験していないので、詳しくは知りませんが、要はデパートの福袋向けに商品を作っているメーカーが存在しているんです。
このように見ると、アパレル系福袋の場合は百貨店の売り場のものよりインショップのブランド系の方が良いと思うかもしれませんが、実際のところは両者とも価値的にはそれほど変わらないと思います。アパレルの場合は明らかな持ち越し在庫の古臭いデザインのものや売れ残り品を詰め込めば、今日のネット社会じゃあたちまち口コミで来年は売上がボッコリと落ち込んでしまうでしょう。このあたりのミックス加減が各売り場のバイヤーの腕の見せ所。
ということで、百貨店の福袋はお客様にとっても百貨店にとっても損はありませんのでご安心を。