食品業界の再編

8月に入り、食品業界が大きく動いています。
「キリン・サントリー経営統合」を皮切りに、「サッポロが明治・ポッカと提携」と、非常に興味深い動きがあります。おもしろいのは飲料、特にビール会社を中心に動いている点。ここで現在の各社の戦略を整理してみます。

キリン…売上高2兆3035億円、ビール飲料まで含めた総合ビール業者としては未だトップの同社はサントリー経営統合へ。成熟して久しい国内市場に見切りをつけ、弱かったアジア市場に打って出るため、同じくアジア市場を狙うサントリーと統合。課題はビール・清涼飲料で重複が多いことだが、サントリーはウィスキー中心でビールが弱く、キリンは逆なので、原材料調達を含め相互補完性は他のビール会社との統合よりもメリットが大きい。しかしやや保守性の強いキリンと「やってみなはれ」で知られるチャレンジャー資質のサントリーの組織風土の違いがやや不安。
サントリー…売上高1兆5129億円、良く知られているように同社のビールはまともに黒字化をしたことがない事業で万年4位(ただし最近、瞬間風速的にサッポロを抜いたこともある)。国内においてはセブン&アイ、イオンの2大流通でPB(プライベート・ブランド)ビールを発売。良好な売上を記録しているが、ますますオリジナル・ブランドのカニバリが発生し、停滞をまねく可能性も。飲料においては中国を始め、積極展開も。
サッポロ…売上高4145億円。ポッカとの提携は低価格の影響を受けにくい同社の自販機網の取り込みが狙い。またポッカは海外売上が2割を超えている。明治は既にポッカに22%出資、先日明治製菓明治乳業が合併し、明治ホールディングスに。同社の商品開発力や商品の重複も少なく、相互補完性は高い。しかし原料調達でのメリットは少ないか。
さて、今回のビール会社を中心とした再編ですが、蚊帳の外なのがアサヒ。スーパードライクリアアサヒなどメガブランドもありますが、売上高は1兆4627億円で、キリン・サントリーの3兆8000億円、サッポロ・ポッカ・明治も1兆6000億円超と、規模的に3位以下になります。同社がこのまま黙ってみているわけがないでしょうから、これからがまた注目ですね。

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