マイケル・ジャクソン追悼

King of Pop: Australian 50th Anniversary Edition

King of Pop: Australian 50th Anniversary Edition

先日マイケルのベスト盤(オーストラリア盤)を買ったばかりなのに。。。
80年代洋楽を始終聞いている私のような人間にとってはマイケルは懐メロでもなんでもなく、エバーグリーンな存在です。
オフ・ザ・ウォール(紙ジャケット仕様)

オフ・ザ・ウォール(紙ジャケット仕様)

ジャクソン5、ジャクソンズ時代のマイケルにはいまだに何の思い入れも興味もない私としては、彼のキャリアはやはりこの「オフ・ザ・ウォール」から。当時日本でも人気があって、「今夜はドント・ストップ」がCMで使用されていたことを覚えています。このアルバムは他にも「ロック・ウィズ・ユー」(ロッド・テンパートン作、今振り返るとロッド作品が一番マイケルに向いていた)やポール・マッカートニー作の「ガールフレンド」などの名曲を収録。ただしこの時点ではまだブラック・コンテンポラリーの良作といったイメージでした。
スリラー

スリラー

そしてお化け作「スリラー」。「ガール・イズ・マイン」「ビリー・ジーン」「今夜もビート・イット」「ヒューマン・ネイチャー」「スタート・サムシング」「PYT」「スリラー」と7曲の(!)トップ10を輩出した(つまりシングルカットをしていないのは2曲だけ)捨て曲なしの名作。「ビリー・ジーン」はいまだに新鮮だし、TOTOのスティーヴ・ポーカロが作った「ヒューマン・ネイチャー」のリリカルな美しさは特筆もの。
私もご多聞にもれず、リアルタイムではこの作品からマイケルを知ったわけですが、今聞くとアイズレー・ブラザーズやアース・ウィンド&ファイアらにつながるCBS/Epic系のクロスオーバー路線の総決算といえる作品ですね。当時のマイケル(と個人的には好きではないけれどもライオネル・リッチー)の活躍がなければ、後のホイットニー・ヒューストンマライア・キャリーあたりの活躍の幅も小さいものにしかならなかったではなかったかと思います。
Bad

Bad

あれだけのお化け作品だけに、その後のマイケルのプレッシャーは計り知れないのですが、USA・フォー・アフリカ「ウィ・アー・ザ・ワールド」を経て出たのがこの作品。結果的には「スリラー」のセールスを超えることはなかったのですが、作品としての充実度はもっとも高いと思います。しかしタイトル曲の出来が一番悪いので、なぜこのタイトルになったのかが不思議。マイケルの奇行癖が盛んに報道されだしたのはこの時期でしたっけ。
この作品ではマイケルはすでにブラコンやクロスオーバーといったレベルを超え、尖鋭化した面すら見せるようになります。この側面は黒人系ではスライ・ストーンリック・ジェームス、プリンスとファンク〜ブラック・ロック系の人たちが切り開いた面がありますが、マイケルはそこにこれまでの圧倒的なポピュラリティを持ち込みます。一方でクラフトワークの「コンピューター・ワールド」に影響されたり、YMOの「ビハインド・ザ・マスク」に英詞をつけてカバーするなんていう話があったようにテクノ的なサウンドエフェクトを取り込もうとしており、その結実がこのアルバムでは大傑作「スムーズ・クリミナル」(一番好きなPV)や次作「デンジャラス」に見られると個人的に感じています。
Dangerous (Spec)

Dangerous (Spec)

この頃でもセールスは落ちる一方でしたが、作品のレベルは落ちていません。「今夜もビート・イット」でエディ・ヴァン・ヘイレンを起用したのと同じようにガンズ&ローゼズのスラッシュを起用したり、当時最も先鋭的だったテディ・ライリーの音作りもマイケルと相性が良いと思います。実質4枚のアルバムで充実したベスト盤ができること自体すごいことですが、個人的には2枚目の新曲群にマイケルの病的な面が感じられました。マスコミや世間への嫌悪感をあらわにした歌詞が中心で、それ以前にもなかったわけではないですが、かなり強烈でした。「スリラー」以後、マイケルはマスコミの格好の餌食にされ、マイケル自身も奇行が激しい上にろくでもない取り巻きがいたわけで、私も個人的にはこのベスト&新曲集以後は興味を持って追うことはありませんでした。その次に出た中途半端なミニアルバム「ブラッド・オン・ザ・ダンス・フロア」や結果的には遺作となった「インヴィンシブル」も80年代から90年代初めの作品と比べてもがっかりな出来だったのは事実で、加えてマイケルへの投資回収か、同じようなベスト盤を乱発するあたりもがっくりでした。
…とまあ、いろいろ書きましたが、80年代から洋楽を聴いてきた人間からすると、マイケルは避けて通れないイコンのようなもので、好き嫌いを超越した、まさにポピュラー・ミュージックそのものだったと思います。ゆえに「King Of Pop」の名前が似合うのは後にも先にもマイケル一人であろうとも思います。
享年50歳、若過ぎます。残念です。