風に吹かれて豆腐屋ジョニー

皆さん、ここ数年スーパーでよく見る「男前豆腐」ってご存じですか? 私はまだ食べたことがありませんが、ネーミングとパッケージが受けて大人気の豆腐なので、ちょっとマーケティング研究をしようと思い、同社(男前豆腐店)のホームページを見ると…


なんじゃこりゃああああ!!


とても豆腐屋のサイトとは思えないおもしろさ!http://www.otokomae.jp/index_jpn.html?2
トップページからしてこうですよ↓

既にブランド化として豆腐に限定しない展開を行っているようで、保守的な豆腐業界としてはまさに革命児。トップページを見ると同社の社長さんが本を出しているようなので、早速ヤフオクでゲット。これがまた面白い。どういう発想でこのようなブランド展開を行ったのかというヒストリーなのですが、豆腐としての発想は突飛ながら、市場戦略的には非常にオーソドックスな差別化といえます。

風に吹かれて豆腐屋ジョニー (セオリーBOOKS)

風に吹かれて豆腐屋ジョニー (セオリーBOOKS)

ネーミングやパッケージだけならいくらでも模倣可能(たとえばフルーツゼリーで一世風靡した「たらみ」があっという間にブームが去り、大手・零細各社乱れて同じようなゼリーを発売したことを思い出します)なわけで、同社の場合商品品質を材料のみならず製造工程から見直した「深さ」が差別化ポイントの本質。そういう意味ではプロダクト・イノベーションの例としても興味深いといえます。
まだ全部は読み終わっていませんが、なぜ保守的な豆腐業界で同社だけがこんなことができたのかというと…。


社長が二代目で権力を振り回したから(笑)


これは失敗すれば否定的要因になりますが、成功すれば肯定的要因になる典型例。要は現社長のセンスの良さに尽きるといえるかもしれません。そのあたりは社長さんもよく理解していて、反発する社員がいたことや、自身の立場を振りかざしたことついても実にアッケラカンと語っておられます。だから嫌味な感じもしないですし、むしろこの本を読んで同社のファンになりました。
もう一点、差別化のポイントが「希少性」だとか「職人技」ではない点も興味深い事例です。加えて同社の人気の広がり方が、広告宣伝はおろかパブリシティですらなく、純粋な消費者の「口コミ」である点、豆腐の市場価格を打ち破って高単価・大量生産という志向を持っている点でも特筆的。つまり、差別化のコンセプトが消費者に完璧なまでに伝われば、プロモーションは必要なくなり、価格競争に巻き込まれることはないということでしょう。
ランチェスター戦略は弱者の戦略として知られていますが、私はあの戦略の重要性や妥当性を十分に理解しているとはいっても、大企業になるための道筋を捨てている点で不満を感じていました。大企業になることだけが企業の存在意義や目的ではもちろんありませんが、ニッチ(すき間市場)で高い利益率を維持する「だけ」というのは少しさびしい気がします。男前豆腐はその点でも可能性を感じさせる非常に重要な事例だと感じています。


ただ正直なところ、この社長さんの本を読むまでは「キワモノ」と思ってたのも事実です。今度食べてみようっと。