西村克己「戦略思考トレーニング」

西村氏といえば、芝浦工大大学院の教授についてから莫大な著作物を書かれている人ですが、文字の入った面積より余白の面積の方が多い中谷某に比べればはるかに良心的な方だと思います。
西村氏の専門は戦略思考で、今回のこの本も類書の中の一冊。PHP文庫なのでヴォリューム的な問題を除けば、それなりにまとまった書籍です。ただ、同文庫は見開き2ページで1テーマ完結のスタイルを文庫でよくやっていますが、どうしてもこれは無理があるような。
さて内容ですが、テーマに沿った設問とそれについての解答・解説。非常に幅広く、おもしろい設問もあり、戦略思考のまったくの素人には入門書の前のオリエンテーションとして、ある程度マスターしているタイプには軽い読み物として向いていますが、深く勉強したい方にはミスマッチでしょう。
本書の設問とその解答・解説はおおむね納得いくものですが、いくつか「ええっ?」というのもあり、ぜひ皆さんも挑戦していただきたいと思います。

例題14:
 あなたは経営者だとしましょう。あなたの会社に2人の経営コンサルタントが売り込みに来ました。会話の中のひとコマに、それぞれの経営コンサルタントから下記のような発言がありました。それを聞いたあなたはどちらの経営コンサルタントを信じますか?
(1)Aさん「わたしはこの道20年コンサルタントをしています。今までの豊富な経験をもとに、御社の素晴らしい発展をお約束しましょう」
(2)Bさん「何年やっても一人前のコンサルタントになった気がしません。毎日が発見と勉強です。経営者に教えてもらうことのほうが多いくらいです」
 Aさんはこの道何十年という過去の経験をセールストークにしています。自信にあふれて、今までの経験を優れた武器としてクライアントに安心してもらおうという意図が伝わります。
 Bさんは毎日が発見というように、自分をまだまだ成長過程だと認識しています。少し頼りない気がします。
 さてあなたならどちらのコンサルタントを信じますか?

西村氏の解答はBさん。私ならどっちも採用しません。Aさんを採用しない理由は西村氏とほぼ同じですが、Bさんは私からすればAさんよりもダメ。またAさん・Bさんを選ぶ際の視点がそもそも西村氏とは違います。さて、皆さんはどう考えます?
他にも「うん?」という解答例もあるので、ビギナー(意外と初心者の方がおかしい点を探せるかも)もプロも読んでみてください。もちろん素晴らしい設問&解答例もありますので、そこもお忘れなく。