あぁ、リスクマネジメント

今日は佐賀の病院でリスクマネジメントの研修に行って参りましたが、その途中…


車で事故ってしまいました…(涙)。


シャレにならない…。人に教える前にお前が気をつけろよと言われてもしょうがないです…。


さて気を取り直して(へこんでますが)、リスクマネジメントはもともと航空業界と原子力発電所で体系化され、発達してきた管理手法です。リスクとは「何らかの価値の損失可能性(行動の自由・金銭など)」「何らかの価値の獲得不可能性(清潔・評判・信用など)」を指し、それを防ぐために事前の予防対策と事後の管理対策を行うことをリスクマネジメントといいます。

医療の世界においては日本看護協会が熱心に研究されており、SHELモデルや4M-4Eマトリクスなどの手法が利用されています。

企業の不祥事や病院での医療過誤・事故のニュースがひっきりなしで、およそ事例ネタには困らないのですが、リスクマネジメントの必要性が特に問われるようになったのは2001〜02年で、この時期はリスクマネジメントにとってエポックメイキングな出来事がいくつか起こりました。

雪印の大量食中毒事件・三菱自動車のクレーム隠し問題が起きたのが02年で、医療においてもこの時期に以下のような事件が全国的に注目を浴びました。

横浜市立大学付属病院:患者取り違え事件(01年)
東京都立広尾病院:消毒液点滴事件(01年)
埼玉医科大学総合医療センター:薬剤単位点滴事件(02年)
東京女子医大病院:心臓手術ミス隠ぺい事件(02年)

東京女子医大はつい最近、この事件で剥奪されていた救急指定を再度認められました。また横浜市立大付病院の事例は、患者を取り違えて手術をしてしまったということ自体もショッキングでしたが、その経緯が非常に興味深いものでした。

 平成11年1月、横浜市立大学医学部付属病院で、患者を取り違え、行うべきでない手術を執刀してしまった事故が発生した。
 被害者となったA氏(74歳男性)は心臓の僧帽弁形成術を、B氏(84歳男性)は肺の嚢胞切除が予定されていた。
 この日、2人の手術時刻は共に9時に設定されていたため、C病棟看護師が2台のストレッチャーを交互に動かしながら手術室交換ホールに移送し、D手術室看護師に「AさんとBさんです」と説明して2人を引き渡した。
 このように2人同時に移送し、引渡しの際にも区別を明確にしなかったことで、D看護師は思い違いをしてしまった。しかも、D看護師がA氏に対して「Bさん、おはようございます。よく眠れましたか」と声を掛けたところ、A氏が「はい」と返答したため(老齢によるものか、手術で頭がいっぱいだったか原因は不明)に、この思い違いが正されることはなかった。
 2人が手術室交換ホールに移送された段階では、当人たちのカルテはそれぞれのストレッチャーのカゴに入っていた。しかしこの病院では、手術室へのカルテの引継ぎはカルテ受け渡し台で行う手順とされていたので、その際に2人のカルテが台上で一緒にされ、取り違えに気づく機会が失われてしまった。
 A氏は12番手術室に移送され、次いでB氏が3番手術室に移送された。手術室内ではそれぞれの麻酔科医師や手術室看護師が、「Bさん、点滴を取りますよ」「Aさんですか、おはようございます」などと呼びかけたが、患者から特段の反応はなかった。
 麻酔処置の段階において、12番手術室では、患者の歯が術前所見よりも1本少ないことに気づいたが、特に問題視されなかった。3番手術室では、患者の身体特徴や肺動脈圧などの数値が術前所見と異なっていたことから電話で病棟に問い合わせたが、「確かにAさんは(手術室に)降りている」との返答を受け、データの相違は説明し得る変化だと納得してしまった。こうして取り違えに気づかないまま、手術が行われた。
(参考:樋口晴彦「組織行動の『まずい!!』学」祥伝社新書,2006年)

非常に不幸なミスの連鎖が起こっていることがうかがえます。

ところで、かつてはこういった医療過誤・事故というのはほとんど表に出ませんでした。企業の不祥事にしてもそうでしたが、情報として毎日のように出てくるようになったのは、実はこの2001年の少し前のある事件が引き金になったと考えています。それは東芝クレーマー事件」(99年)です。事件の詳細はリンク先や下記書籍を参考にしていただくとして、この事件はインターネットが広く一般化したことにより、企業と消費者の力関係が逆転したという点でコンプライアンスやリスクマネジメントの必要性が強く求められるようになったその発端といえます。

全証言 東芝クレーマー事件―「謝罪させた男」「企業側」 (小学館文庫)

全証言 東芝クレーマー事件―「謝罪させた男」「企業側」 (小学館文庫)

要は誰が悪かろうと何が間違いだったであろうとにかかわらず、取り組む必要性が極めて高いのが現在の状況であり、日本版SOX法対応なども合わせて考えなければならない経営課題となっています。


まあ何はさておき、皆様も車の運転にはくれぐれも気をつけてください(はぁぁ)。