アイフルの防止対策?

 金融庁は14日、消費者金融大手のアイフル(本社・京都市)に対し、5月8日から3〜25日間、全店舗(約1900店)を対象にした業務停止命令を出したと発表した。
 強引な取り立てなどの違法行為が3店舗、2部署という広範囲で発覚し、内部管理や法令順守が徹底されていないとして、異例の厳しい処分となった。上場している消費者金融会社が全店舗を対象とした業務停止命令を受けるのは初めてで、貸金業の規制見直し議論にも影響しそうだ。

ということで、まさに「どうする?アイフル」状態になったわけですが(このギャグ、みんな言ってるんだろうなぁ)、これに対してアイフルは早速防止対策を発表しました。
http://www.aiful.co.jp/ecashing/f/common/pdf/060414nr_2.pdf
ホームページから同社の再発防止と法令遵守の取組みとして出されたものを項目のみ抜粋してみます。

1.社内規定・システムの防止
 (1)債権の請求業務に関する規定の見直し
 (2)貸付規定の見直し
 (3)交渉計画の記録に関する規定・入力システムの見直し
2.社員指導・教育の徹底
 (1)店舗責任者の法令勉強会の実施
 (2)『貸金業務取扱主任者資格検定制度』の導入
 (3)債権の請求業務専門部署を対象とした研修実施
 (4)債権の請求業務専門部署をはじめとした集中センター電話応対のモニタリング強化
3.社内チェック体制の拡充強化
 (1)検査部検査要綱の見直し
 (2)営業部長・営業推進部の臨店チェック項目の見直し
 (3)支店長(支店長補佐)による店舗チェック態勢の見直し
4.コンプライアンス態勢の拡充
 (1)『コンプライアンス室』の設置
 (2)『業務管理課』の設置
5.組織・社内体制の整備
 (1)訪問による債権請求業務の撤廃
 (2)債権請求業務の完全集中センター化

短期間で多くの項目を挙げてますが、あまり効果がないように思います。福田吉孝社長が会見で話した「問題点は明確に認識している。成果主義を求め過ぎたことだ」が原因だとすれば(これについては後述)、上記は直接的な策ではありません。これらの策はむしろ社内をギスギスさせるだけでなく、不正行為が見えないところに潜るだけではないでしょうか?


「2.社員指導・教育の徹底」や「3.社内チェック体制の拡充強化」の策から透けて見えるのは、「今回の不祥事は現場の独自判断による」と言わんばかりのトップ陣の姿勢。
アイフルの不祥事は、ノルマ主義が原因であるのは間違いありません。ノルマがあるから現場は執拗で一線を越えた対応をしたわけでしょう。そうである以上は、このビジネスモデル自体に手を打たねばならないはずです。また福田社長は「成果主義の求めすぎ」という言い方をしてますが、成果主義」と「ノルマ主義」は別物です。前者は社員のモチベーション向上のための施策であるのに対し、後者は経営管理としてのあり方で、企業側のメリット享受のやり方でしかないからです。


同社のこれまでの成長の軌跡を見ると、このノルマ主義が実は成長要因であったというのがうかがえ、今回の不祥事の背景でもあります。もっともかつての商工ローンなどを例に挙げるまでもなく、この手の事業が成長を続けるにはノルマが最も効果的だったんでしょう。


また、同社のホームページからIR関係の資料を見ると、売上は伸びているもの、営業利益ベースでの伸びは売上のそれを下回っていることがわかります。加えて新規獲得顧客数が前年対比でマイナスになっていることも、一線を越えてしまった要因として挙げられそうです。
消費者金融は、アコム武富士アイフル・プロミスの4業者がほぼ同じくらいの売上水準で競っている珍しい業種で、この激しい競争環境を考えてみると、現在のアイフルの状態で、もし自分が社長だったら、どんな策を打ち得るんでしょうか?実際のところは難しいですね。


P.S.本記事ではあくまで企業の経営としてのあり方を考えるもので、消費者金融が引き起こしている社会的問題はここでは考察対象には入れていませんのでご了承ください。


エデュテイメント・パートナーズ 秋満