残業に関するメモ

ちょっと前の雑誌の記事(佐々木常夫「ワークライフバランスを実現する『仕事術』」)より。

週刊 東洋経済 2009年 11/21号 [雑誌]

週刊 東洋経済 2009年 11/21号 [雑誌]

以下、重要な点を要約。

ワークライフバランスを主張する経営者は口だけで、本心から推進しようとはまだしていない。その理由は以下の3つ。
1.「職場の多忙さが日本企業の競争力の源泉」という考え方
2.「寝ても覚めても仕事のことを考えることによって、人は育ち、仕事にも幅ができる」という研究開発型の発想
3.「ワークライフバランスの考え方を進めると、社員が育児休業をとったり、出産して短時間労働になったりするので、コストアップが生じる」という考え方
1.は高度経済成長期に通用した考え方で、現在は体力より知恵の勝負である。2.についてはその道のプロになるために人生のある一時期に死ぬほど働くことは必要だが、闇雲に頑張っても成果は出ない。3.については育休・短時間勤務の「コスト」より、社員のモチベーション向上の「ベネフィット」の方がはるかに大きい。

この小論には厚労省による労働者による残業発生理由のデータを引用しています。

「そもそも所定労働時間内では片付かない仕事量だから」…60%
「自分の仕事をきちんと仕上げたいから」…42%
「仕事の性格上、所定内でないとできない仕事があるから」…36%
「最近の人員削減により人材不足だから」…27%
「取引先との関係で納期に間に合わせないといけないから」…23%

「残業手当や休日手当を増やしたいから」…4%
「定時で帰るより働いている方が楽しいから」…1%
この上2つから、「自分の都合で残業する人は、会社や仕事の都合で残業するよりかなり少ない」と厚労省は結論づけている。

これらのデータ結果についての佐々木氏の考察は以下にまとめた通りですが、時間外労働に関する業務改善に数多くかかわってきた私の実感とも完全に一致します。

「業務量が多い」→業務量が多ければ重要度の低い仕事を捨てる。減らさないだけの話。
「自分の仕事をきちんと仕上げたい」→きちんと仕上げなくて良い。会社にはつまらない仕事でもやらなければならないものが多い。その場合、完成度を低くして短時間で済ませる。自分の仕事の見栄のために残業するなど、会社にとっては迷惑千万。
また厚労省による「自分の都合で残業する人は、会社や仕事の都合で残業するよりかなり少ない」という結論は誤り。佐々木氏がかつて課員全員に原則残業禁止を言い渡したときの最大の抵抗勢力は部下だった。理由は以下の3つ。
1.「こんなに重要な仕事をしているのにそれをやめて帰れというのですか」という考え方
2.残業手当が実は生活設計の基になっているという事実(口には出さないが)
3.「家に早く帰ってもすることがないから」という事実

病院や福祉施設の場合、2.はほとんどない(というのもサービス残業だから)のですが、1.と3.は実際に多い例です。さて、これらの抵抗に対し、佐々木氏はどう対応せよと主張されているかというと…。

1.について→「私は課長として、今君がしている仕事は重要だと思っていないので、やめて帰りなさい」といえばよい。部下の自主性に任せない。
2.について→特に対応策の記述なし
3.について→家庭や家族にコミットしていない考え方が危険。「働いている方が良いから」残業しているのであり、いわば残業を「自分のためにしている」。これは会社にとって迷惑な存在であり、あの手この手で定時に帰るよう追い出さないといけない。

2.は社員にとっては本音ベースなので、自己責任の一言で済むため対策の記述がないのでしょう。
ところで、この佐々木氏の主張は実に現状の職場を言い当てていますが、コトの本質は実は「仕事の優先順位がわからない・判断できない」点だと思います。各々の仕事の目的性や合理性みたいなものを考える習慣がないのか諦めているのかはわかりませんが・・・。

部下を定時に帰す仕事術 ~「最短距離」で「成果」を出すリーダーの知恵~

部下を定時に帰す仕事術 ~「最短距離」で「成果」を出すリーダーの知恵~

ビッグツリー 私は仕事も家族も決してあきらめない

ビッグツリー 私は仕事も家族も決してあきらめない