アイデアの作り方に関する書籍

いわゆる「発想法」に関する本は山ほどあります。ちなみに原典とも言われるのがこの本。

アイデアのつくり方

アイデアのつくり方

筆者のジェームス・W・ヤング(1886-1973)は、アメリカ最大の広告代理店・トムプソン社の常任最高顧問で、アメリカ広告代理業協会(4A)の会長などを歴任、広告審議会(AC)の設立者で元チェアマンだった人。
この本の本文はわずか60ページ弱で、巻末の竹内均氏の解説(これが秀逸なので、ここを先に読むと理解がしやすい)と訳者あとがきが40ページほどあります。
1975年に出版された本書が、このように非常に薄い文量であるにもかかわらず、古典となっているのは、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ」である、と喝破した点にあります。「企画の神様」と呼ばれたジョン・ワナメーカーも、「Success = Other People's Brain + Other People's Money」(成功とは、他人の脳と金を使って組み合わせること)と同様の意味のことを指摘しています。ヤングはそのためには特に特殊な知識や技術は必要なく、「事実と事実の間の関係性を探ろうとする心の習性がアイデア作成には最も大切なもの」と指摘しています。
これらの指摘は、以後のあまたの発想法の原点となっています。ヤングによれば、アイデアが作られる全過程・方法は以下の形でまとめられます。

  1. 課題のための資料と一般的知識の貯蔵を豊富にすることから生まれる資料(資料集め)
  2. 心の中で資料に手を加える
  3. 意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる
  4. イデアの実際上の誕生
  5. 現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる

以後、これをベースにブレーン・ストーミング→KJ法、マンダラチャート(マンダラート)、SCAMPERなどのよく知られた手法が出てくるわけですが、最近これらの発想法をほぼ網羅した(と思われる)大著が出ました。

アイデア・バイブル

アイデア・バイブル

名著「アイデアのおもちゃ箱」の著作で有名なマイケル・マハルコによるもので、30を超える発想法が掲載されています。内容的にはその「アイデアのおもちゃ箱」の大幅増補版。
マイケル・マハルコという人は、米軍在籍時にNATOの情報専門家チームを率い、ドイツの研究所で独創的思考法を国際的に収集・研究して、その思考法をNATOの実際の問題解決にあてはめて行った人。後にCIAでも思考法の使い方を指導したそうです。ヤングや後述の加藤昌治氏、「オズボーンのチェックリスト」で知られるオズボーンのように、発想法に関しては広告代理店出身者がその仕事の特徴からか多く、マハルコのような経歴は珍しいといえます。
アイデアのおもちゃ箱―独創力を伸ばす発想トレーニング

アイデアのおもちゃ箱―独創力を伸ばす発想トレーニング

マハルコによる「アイデアパーソンになるための効果的なワークアウト」は以下の11。各ワークアウトの詳細は本著をご参考のこと。要は習慣化ですね。

  1. 毎日考える
  2. 狙いをつける
  3. 細部を記憶する
  4. 慣習を打ち破る
  5. 本を読む
  6. 内容分析をする
  7. ブレイン・バンクを作る
  8. トラベル・ジャンキーになる
  9. すばやくメモを取る
  10. メモを活用する
  11. イデア・ログを取る

ちなみに私が発想法のいろんなバリエーションを知ったのは加藤昌治氏の「考具」という本から。コンパクトにまとまった良作なので、こちらの本で興味を持った方はマハルコもぜひ。加藤氏は今回のマハルコの新著でナビゲーターとしてかかわっています。

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

ただし、注意したいのは、発想したアイデアが使えるかどうかは「問題を正確につかむ」ことが先であること。このあたりはこちらの本をどうぞ。これも1988年に発刊されて以来、版を重ね続ける古典です。
ライト、ついてますか―問題発見の人間学

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

ワインバーガーの本は問題発見の人間的な側面に着目をしていますが、より網羅性の高い切り口を示した名著としては川瀬武志氏のこちらの本もおすすめ、というか必読です。
IE問題の基礎

IE問題の基礎